1. 土木工事会社を取り巻く現状と仕事獲得環境の変化
1-1. 土木工事の需要は今後も続く
土木工事業界について、「人口減少が進む日本では将来的に仕事が減るのではないか」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、実際には今後も安定した需要が見込まれています。その大きな理由の一つが、インフラの老朽化です。
日本では高度経済成長期に整備された道路、橋梁、トンネル、上下水道などの社会インフラが数多く存在しています。これらの施設は建設から数十年が経過しており、今後は維持管理や更新工事が全国各地で必要になります。例えば、橋梁の補修工事一つをとっても、点検、補修、補強、更新というサイクルが継続的に発生します。上下水道についても老朽化対策は避けられない課題であり、多くの自治体が更新計画を進めています。また、近年は豪雨や台風、地震などの自然災害が増加しています。河川改修工事や法面工事、護岸工事などの防災・減災工事は今後さらに重要性を増していくでしょう。災害発生後の復旧工事も含めると、土木工事会社が果たす役割はますます大きくなっています。
つまり、土木工事の需要自体は決してなくなるわけではありません。問題は、「需要がある中で、どの会社が選ばれるのか」という点なのです。
1-2. 技術力だけでは仕事が増えない時代になっている
以前の建設業界では、施工品質が良く、現場対応がしっかりしていれば自然と仕事が集まるケースもありました。しかし、現在は状況が変化しています。発注企業は限られた予算の中で工事を進めなければならず、施工会社を選ぶ際も複数社を比較することが一般的になっています。
その際に評価されるのは施工品質だけではありません。見積提出のスピード、問い合わせへの対応、工程調整力、安全管理体制、書類対応力など、総合的な対応力が求められています。例えば、同じ品質の施工ができる会社が2社あった場合、見積提出が早く、連絡もスムーズで、現場での対応も柔軟な会社の方が選ばれる可能性は高くなります。
つまり、「良い工事ができる会社」であることは前提条件であり、それだけでは差別化が難しくなっているのです。
1-3. 新規取引先開拓が経営課題になっている
多くの土木工事会社は、売上の大半を既存取引先からの受注で構成しています。もちろん長年付き合いのある顧客との関係は大切です。しかし、既存顧客への依存度が高すぎると、経営上のリスクも大きくなります。例えば、主要顧客の案件数が減少した場合、それだけで売上が大きく落ち込む可能性があります。担当者の異動や企業方針の変更によって発注先が変わることも珍しくありません。
だからこそ、多くの成長企業は新規取引先の開拓を継続的に行っています。仕事が十分ある時期でも営業活動を止めず、新しい企業との接点づくりを続けることで、将来の受注基盤を広げているのです。
2. 仕事を獲得する主な方法と課題
2-1. 紹介だけでは仕事が増えにくくなっている理由
土木工事会社の仕事獲得方法として、今でも最も多いのが紹介です。既存の取引先からの紹介や、同業者、資材商社、建機リース会社などから新しい案件を紹介されるケースは少なくありません。
紹介営業には大きなメリットがあります。すでに信頼関係がある企業からの紹介であるため、発注企業側の心理的ハードルが低くなります。ゼロから営業を行う場合と比べて、話を聞いてもらいやすく、受注につながる可能性も高くなります。また、施工品質や対応力について事前に評価されている状態で紹介されるため、価格だけで比較されにくいという特徴もあります。実際に建設業界では、「どの会社か分からない企業」よりも、「○○会社から紹介された企業」の方が安心して依頼しやすい傾向があります。そのため、紹介による受注は今後も重要な営業手法であることに変わりありません。
しかし、紹介だけに依存することには大きな課題があります。最大の問題は、自社で案件数をコントロールできないことです。どれだけ仕事が欲しいと思っていても、紹介が増えるかどうかは相手次第です。また、建設業界全体で人手不足が進んでいる現在、従来のように仕事を回し合う余裕がなくなっている企業も増えています。さらに、紹介は人脈の範囲内でしか発生しないため、長年同じ地域で事業を行っている企業ほど、取引先や協力企業の顔ぶれが固定化されやすく、新しい企業との接点が生まれにくくなります。
その結果、「技術力はある」「施工実績もある」「人員にも余力がある」にもかかわらず、新しい仕事が増えないという状況に陥ることがあります。
近年成長している企業ほど、紹介を大切にしながらも、それ以外の方法で新しい取引先との接点を作っています。紹介は重要な受注チャネルの一つですが、それだけに依存しない体制づくりが求められているのです。
2-2. 新しい取引先を増やすために活用されている営業手法とは
紹介以外の方法で仕事を増やしたいと考えた場合、多くの企業が活用しているのがホームページ、SNS、展示会、業界団体、そして建設業専門マッチングサービスなどです。以前は建設業界において「営業活動」という文化があまりありませんでした。良い仕事を続けていれば自然と紹介が増え、案件が回ってくるケースも多かったためです。しかし現在は状況が変化しています。発注企業側も新しい施工会社を探しており、その際にはインターネットで情報収集を行うことが一般的になっています。
例えば、ホームページやSNSに施工実績や対応工種、保有資格、対応エリアなどが掲載されていれば、「現在も活発に活動している会社」としいて認識され、企業としての信頼性を伝えることができます。また展示会や業界団体への参加も有効です。実際に担当者と顔を合わせて話ができるため、インターネットだけでは伝わらない信頼関係を構築しやすくなります。
ただし、これらの方法には時間がかかるという課題があります。ホームページを作ってもすぐに問い合わせが来るわけではありませんし、展示会に参加したからといってその場で案件が決まるわけでもありません。
そこで近年利用が増えているのが、建設業専門のマッチングサービスです。建設業に特化しているため、工種やエリアを指定して案件を探すことができ、自社に合った仕事を見つけやすいという特徴があります。また、従来の紹介営業では接点を持てなかった企業とも出会えるため、新規取引先開拓の手段として活用する企業が増えています。また、地域や人脈の壁を超えた新しい取引機会を得られる可能性があります。
重要なのは、「どれか一つだけをやる」ことではなく、複数の方法を組み合わせることです。
実際に安定して仕事を増やしている企業ほど、
- 紹介
- 既存顧客からのリピート
- ホームページの運用
- 展示会への参加
- 建設業専門サービスの活用
など複数の受注経路を持っています。一つの方法に依存するのではなく、継続的に新しい接点を増やしていくことが、今後の土木工事会社に求められる営業戦略と言えるでしょう。
3. 発注企業から選ばれる会社の共通点
仕事を増やしたいと考えたとき、「もっと営業しなければならない」と考える企業は少なくありません。しかし実際には、営業活動そのものよりも先に考えるべきことがあります。それは、「発注企業から選ばれる状態を作れているか」ということです。どれだけ多くの企業へアプローチしても、選ばれる理由が明確でなければ継続的な受注にはつながりません。
ここでは、多くの発注企業が実際に重視しているポイントについて解説します。
3-1. 価格だけで勝負していない
仕事を獲得したいと考えたとき、最も手っ取り早い方法は価格を下げることです。実際、「まずは仕事を取りたいから利益を削ってでも受注する」という判断をする企業もありますが、価格競争に依存した営業は長続きしません。なぜなら、自社より安い会社が現れれば簡単に置き換えられてしまうからです。また、利益率が低い状態で受注を続けると、人材育成や設備投資、安全対策などに十分な予算を確保できなくなります。その結果、品質や対応力が低下し、さらに価格競争へ巻き込まれるという悪循環に陥る可能性があります。
発注企業は必ずしも最安値を求めているわけではありません。
特に継続的な取引を前提とする場合は、
- 工程を守れるか
- 品質は安定しているか
- 安全管理は徹底されているか
- コミュニケーションは取りやすいか
といった点を重視しています。
例えば、多少金額が高くても、毎回工程通りに工事を進めてくれる会社は発注側にとって非常に価値があります。現場では工事の遅れが他工種にも影響するため、「予定通り進む安心感」そのものが大きな評価につながるのです。仕事を増やすためには、価格以外の強みを明確に伝えることが重要です。
3-2. 品質・安全・対応力をアピールできている
優れた技術を持っていても、それが相手に伝わらなければ評価されません。実際、多くの土木工事会社は高い施工技術を持ちながら、その強みを十分に発信できていないケースがあります。
発注企業が新しい施工会社を探す際には、
- 過去の施工実績
- 保有資格
- 対応工種
- 施工エリア
- 安全管理体制
などを確認します。
ところが、ホームページに十分な情報が掲載されていなかったり、施工実績が更新されていなかったりすると、せっかくの強みが伝わりません。近年は対応力も重要な評価項目です。問い合わせへの返信が早い会社、見積提出が迅速な会社、現場で柔軟な対応ができる会社は高く評価される傾向があります。特に建設業界では、工程変更や追加工事など予期せぬ対応が発生することも珍しくありません。そのため、発注企業は「施工が上手い会社」だけでなく、「安心して任せられる会社」を探しているのです。品質・安全・対応力は、自社では当たり前だと思っていることでも、積極的に発信することで差別化につながります。
3-3. 継続的に依頼したくなる会社になっている
仕事を増やす上で重要なのは、新規案件を獲得することだけではなく、継続的に依頼してもらえる関係を作ることが重要です。発注企業にとって、会社選定、見積比較、施工能力の確認など、多くの時間と手間がかかるため、新しい施工会社を探すことは大きな負担となっています。そのため、一度信頼できる会社と出会うと、できるだけ継続的に依頼したいと考える傾向があります。
継続受注につながる企業には共通点があります。それは、「約束を守る」という非常に基本的なことを徹底している点です。「工程を守る」
「報告を怠らない」「問題が起きたときに迅速に共有する」など、こうした積み重ねが信頼を生みます。仕事を増やすためには、新規営業だけでなく、既存顧客との関係強化にも力を入れることが重要です。
4. 成長している会社が実践している戦略とは
仕事を増やし続けている企業は、偶然案件が集まっているわけではありません。市場環境が変化する中でも受注を伸ばしている企業には、共通した考え方があります。
4-1. 案件が少ない時期でも営業を続けている
多くの企業は忙しくなると営業活動を止めてしまいがちですが、成長している企業は繁忙期であっても新しい企業との接点づくりを継続しています。その背景として、仕事が減ってから営業を始めても成果が出るまでに時間がかかることを理解しているからです。建設業の営業は、問い合わせをしてすぐ案件になるわけではありません。まず会社を知ってもらい、小規模案件で実績を作り、徐々に信頼関係を構築していく必要があります。そのため、仕事がある時期こそ将来に向けた営業活動を継続することが重要なのです。
4-2. 得意分野を明確に打ち出している
発注企業は「何でもできます」という会社より、「この工事なら任せてください」という会社の方が選びやすい傾向があります。
例えば、
- 法面工事に強い
- 下水道工事に実績が多い
- 舗装工事を得意としている
- 災害復旧工事に対応できる
など、自社の強みを明確に打ち出している企業は記憶に残りやすくなります。特に競争が激しい時代だからこそ、専門性は大きな武器になります。自社の実績を振り返り、どの工事で評価されているのかを整理することが重要です。
4-3. 既存顧客との関係強化に取り組んでいる
新規営業ばかりに目が向きがちですが、成長企業は既存顧客を非常に大切にしています。定期的な情報共有や現場終了後のフォローを行うことで、次の案件につながる可能性が高まります。また、既存顧客との関係性が良好だからこそ紹介が生まれるのです。仕事を増やすためには、現在の顧客との関係を見直してみることも重要です。
4-4. 新しい出会いの場を積極的に活用している
従来の紹介だけでは、新しい取引先との接点には限界があります。
そのため近年は、
- 展示会
- 交流会
- 建設業専門サービス
などを活用する企業が増えています。成長企業ほど、「待つ営業」ではなく「出会いを増やす営業」を実践しています。特に人脈に依存しない新しい接点づくりは、今後ますます重要になるでしょう。
5. これからの土木業界で仕事を増やすために知っておくべき変化
5-1. 公共工事だけに依存する経営リスクが高まっている
土木工事会社の中には、売上の大半を公共工事が占めている企業も少なくありません。公共工事は支払い面での安心感があり、景気の影響も比較的受けにくいというメリットがあります。しかし近年は、公共工事だけに依存する経営リスクも意識されるようになっています。自治体によって発注量には差があり、地域によっては大型案件が一巡して工事件数が減少することもあります。また、入札参加企業の増加によって価格競争が激しくなるケースもあります。特に地方では、特定自治体の工事が売上の大半を占めている企業も珍しくありません。仮に発注方針の変更や予算縮小が起きた場合、企業経営へ大きな影響を与える可能性があります。
そのため近年は、公共工事を軸としながらも、
- 民間造成工事
- 外構工事
- インフラ維持管理工事
- プラント関連工事
- 災害復旧関連工事
など、受注先の多様化を進める企業が増えています。仕事を増やしている企業ほど、「どこから仕事を受けるか」という視点で受注構成を見直しています。
5-2. ICT施工への対応が新たな受注機会につながる
近年、国土交通省はi-Construction*1 を推進しており、ICT施工*2 の導入が全国で進んでいます。ドローン測量や3次元設計データ、ICT建機を活用した施工は、以前は大手企業中心の取り組みでした。しかし現在では中小規模の土木工事会社にも普及し始めています。もちろん、すべての企業が高額な設備投資を行う必要はありません。
しかし、
- ICT施工に対応できる
- ドローン測量業者と連携できる
- 3次元データを扱える
といった体制を持つことで、参加できる案件の幅が広がる可能性があります。特に国や自治体が発注する工事では、ICT活用を前提とした案件が増加しています。今後は施工能力だけではなく、「新しい施工方法に対応できるか」が受注機会を左右する場面も増えていくでしょう。

*1:調査・測量から設計・施工・維持管理までのあらゆるプロセスでICT等を活用して建設現場の生産性向上を図る仕組み。
【出典】国土交通省「i-Construction・インフラ推進コンソーシアム」
*2:ICT(情報通信技術)を活用し、各工程から得られる電子情報を活用して高い精度の施工を効率よく行うこと。
【出典】KENTEM「ICT施工とは?施工内容や建設業へ導入のステップとメリットを解説」
5-3. 維持管理工事への対応力が企業の将来を左右する
土木工事というと道路新設や造成工事をイメージする方も多いかもしれません。しかし今後の市場を見ると、新設工事よりも維持管理工事の重要性が高まると予想されています。橋梁、トンネル、河川施設、上下水道など、日本の社会インフラは一斉に老朽化の時期を迎えています。
そのため、
- 補修工事
- 補強工事
- 更新工事
- 点検業務
といった分野は今後も継続的な需要が見込まれています。特に維持管理工事は、新設工事とは異なる技術や知識が求められます。例えば、橋梁補修では劣化診断の知識が必要になることがありますし、下水道更新工事では既設構造物への対応経験が重要になります。今後は自社の得意工種だけでなく、「次に伸びる分野」を見据えた技術習得も重要になるでしょう。
5-4. 災害対応力を持つ企業への期待が高まっている
近年、日本各地で豪雨や地震などの自然災害が頻発しています。災害発生時には道路啓開、応急復旧、河川復旧など、土木工事会社が果たす役割は非常に大きくなります。実際に自治体や元請け企業の中には、「緊急時に対応できる施工会社」を重視するケースも増えています。災害対応実績は企業の信頼性向上にもつながり、平常時の受注にも良い影響を与える場合があります。また、災害復旧工事は地域社会への貢献という意味でも非常に意義のある仕事です。これからの土木工事会社には、通常工事だけでなく有事にも対応できる体制づくりが求められていくでしょう。
6.まとめ
土木工事の需要は今後も継続すると予想されています。インフラの老朽化対策や防災・減災工事、災害復旧工事など、社会に必要とされる工事がなくなることはありません。しかし、仕事があることと、自社がその仕事を受注できることは別の話です。これからの時代は、施工品質だけでなく、対応力や情報発信力、取引先との関係構築力なども企業評価の対象になります。また、既存顧客だけに依存するのではなく、新しい取引先との接点を継続的に増やしていくことも重要です。成長している企業は、案件が少なくなってから動くのではなく、常に将来を見据えて営業活動やネットワーク構築に取り組んでいます。
もし、「新しい取引先を開拓したい」「案件情報を増やしたい」「これまで接点のなかった企業とつながりたい」とお考えであれば、建設業専門のマッチングサービス『ミツマド』の活用も一つの選択肢です。
ミツマドでは、全国の建設会社とつながることができ、新たな取引機会の創出や案件獲得のきっかけづくりをサポートしています。これまでの紹介だけでは出会えなかった企業との接点を広げ、将来の受注基盤を強化するために、ぜひ一度ご活用をご検討ください。














