2026.06.16

2026年最新版|建設業の熱中症対策義務化とは?企業が対応すべきポイントを徹底解説

2026年最新版|建設業の熱中症対策義務化とは?企業が対応すべきポイントを徹底解説

近年、日本では猛暑日が増加しており、建設現場における熱中症リスクが年々高まっています。特に建設業は屋外作業が多く、高温環境下での作業が避けられないため、熱中症による労働災害が発生しやすい業種として知られています。
こうした状況を受け、2025年6月から労働安全衛生規則が改正され、一定の条件下で事業者による熱中症対策が義務化されました。
「何を対応すればよいのか分からない」「協力会社への周知は必要なのか」「元請企業としてどこまで対応すべきなのか」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、熱中症対策義務化の概要から具体的な対応方法、建設会社が押さえておくべきポイントまで詳しく解説します。

目次

1. 建設業における熱中症の現状

1-1. 建設業は熱中症リスクが高い業界

建設業は他業種と比較して熱中症リスクが高い業界です。屋外での作業が中心となるため、直射日光や照り返しの影響を受けやすく、真夏には体感温度が40℃を超えることもあります。さらにヘルメットや安全帯、作業着の着用が必要なため、身体への負担は想像以上に大きくなります。

特に屋根工事、外壁工事、足場工事、土木工事などは日陰が少ない環境で作業を行うことが多く、熱中症リスクが高い工種として知られています。近年は猛暑日の増加に伴い、これまで問題がなかった地域や時期でも熱中症対策が必要となっています。

現場の安全管理において、熱中症対策はもはや「夏場の注意事項」ではなく、労働災害防止の重要なテーマとなっています。

1-2. 毎年発生する熱中症による労働災害

厚生労働省が公表している労働災害統計を見ると、熱中症による死傷者数は毎年発生しており、死亡災害も継続的に報告されています。特に、建設業は製造業や運送業と並び、熱中症災害の発生件数が多い業種の一つです。

熱中症は、初期対応の遅れが重症化につながりやすい特徴があります。「少し体調が悪そうだった」「本人が大丈夫と言ったので作業を続けさせた」といったケースが、重大事故につながることも少なくありません。

また、熱中症による休業や離脱は、本人だけでなく現場全体の工程にも影響を与えます。労働災害防止の観点だけでなく、安定した現場運営のためにも熱中症対策は欠かせない取り組みとなっています。

【出展】厚生労働省「労働災害統計(令和7年)

1-3. 気候変動による影響

近年は気候変動の影響により、全国的に平均気温が上昇しています。以前であれば7月から8月が熱中症のピークと考えられていましたが、現在では、5月や9月でも真夏日や猛暑日が観測されるケースが増えています。

そのため、「梅雨明けから対策を始める」「お盆まで気を付ければ良い」といった従来の考え方では十分とは言えません。年間を通じて気温やWBGT値*1 を確認しながら管理することが求められています。

今後も猛暑の頻度が増えると予測されており、熱中症対策は一時的な対応ではなく、企業として継続的に取り組むべき安全管理の一環として考える必要があります。

*1:熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。

【出展】環境省熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について

2. 熱中症対策義務化の概要

2-1. 法改正の背景

熱中症による死亡災害を分析すると、多くのケースで「異変に気付くのが遅れた」「適切な対応が行われなかった」という共通点があります。症状が進行すると意識障害を引き起こすため、初期対応の遅れが命に関わる事故へと発展してしまいます。

こうした状況を受け、厚生労働省は労働安全衛生規則を改正し、事業者による熱中症対策の強化を進めることになりました。単に注意喚起を行うだけではなく、現場で実際に機能する体制づくりが求められています。

今回の改正は、熱中症を個人の体調管理の問題として捉えるのではなく、企業が主体的に防止策を講じるべき労働災害として位置付けた点が大きな特徴です。

2-2. 対象となる作業

改正内容では、高温環境下で一定時間以上作業を行う労働者が対象となります。建設現場の多くは屋外作業であり、夏季には対象となる可能性が高いと考えられます。

特に、WBGT値(暑さ指数)が高い環境での作業は注意が必要です。気温だけでなく湿度や日射の影響も考慮されるため、「気温はそれほど高くないから大丈夫」と判断するのは危険です。

元請け企業や現場管理者は、自社社員だけでなく協力会社の作業員も含めた現場全体の安全管理を意識し、運営していく必要があります。

2-3. 違反した場合

熱中症対策義務化への対応を怠った場合、労働安全衛生法および労働安全衛生規則に基づく行政指導や是正勧告の対象となる可能性があります。特に、必要な体制整備を行わずに熱中症による労働災害が発生した場合、事業者の責任が問われることもあります。

また、労働災害が発生すると補償対応だけでなく、工事の中断や工程遅延、取引先からの信用低下など経営面への影響も大きくなります。近年は事故情報がSNSなどで拡散されることもあり、企業イメージの低下につながるリスクもあります。

法令遵守はもちろん、従業員や協力会社を守るためにも、熱中症対策は積極的に取り組むべき重要な課題と言えるでしょう。

【出展】厚生労働省 富山労働局「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)

3. 企業に求められる対応内容

3-1. 報告体制の整備

今回の制度改正で重視されているのが、熱中症が疑われる作業員を発見した際の報告体制の整備です。熱中症は初期症状の段階で適切な対応を行えば重症化を防げるケースが多い一方、発見や連絡が遅れることで命に関わる事態へ発展することがあります。

そのため、現場では「誰に連絡するのか」「どのような症状が見られたら報告するのか」を明確にしておくことが重要です。現場責任者や安全担当者など、連絡先を事前に共有し、緊急時に迷わず行動できる体制を整備する必要があります。

また、朝礼や新規入場者教育*2 などを活用し、協力会社の作業員を含めて周知することも重要です。報告ルールが曖昧なままでは、せっかくの制度も機能しません。

*2:建設工事現場に作業員がはじめて入場する際に行なわれる教育のこと。

【出展】Greenfile.work「建設業における新規入場者教育とは?|目的と実施基準のポイントも解説

3-2. 緊急時の対応手順を明確にする

熱中症の疑いがある作業員が発生した場合、迅速かつ適切な対応が求められます。そのため企業には、あらかじめ対応手順を定めておくことが求められています。

例えば、作業を中止させて日陰や冷房設備のある場所へ移動させる、水分や塩分を補給させる、意識障害がある場合はすぐに救急要請を行うなど、具体的な対応フローを決めておくことが重要です。

また、現場責任者だけでなく職長や作業員も基本的な対応方法を理解しておく必要があります。実際の現場では管理者が近くにいないケースもあるため、誰でも初動対応できる状態を作ることが重症化防止につながります。

3-3. 作業員への周知と教育

制度を整備するだけでは十分ではありません。現場で働く作業員が内容を理解して初めて効果を発揮します。

熱中症の初期症状としては、めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉痛、頭痛、吐き気などが挙げられます。しかし実際には、「これくらいなら大丈夫」「休むと迷惑がかかる」と無理をしてしまう作業員も少なくありません。

そのため、企業は熱中症の危険性や報告の重要性について、定期的に教育を実施する必要があります。特に新規入場者や外国人作業員に対しては、理解しやすい資料や説明方法を用意することも重要です。

4. 建設現場で実施したい具体的な熱中症対策

4-1. WBGT値を活用した現場管理

熱中症対策において重要なのが、WBGT値(暑さ指数)の活用です。WBGT値は気温だけでなく湿度や日射の影響も考慮した指標であり、環境省や厚生労働省も活用を推奨しています。

建設現場では気温だけを見て判断するケースもありますが、湿度が高い日や風が少ない日は、気温以上に危険な環境になることがあります。そのため、WBGT測定器を活用しながら現場状況を把握することが重要です。

WBGT値が高い場合は、作業内容の見直しや休憩回数の増加など、状況に応じた対応を行うことで熱中症リスクを大幅に低減できます。

4-2. 水分・塩分補給の徹底

熱中症予防の基本となるのが水分補給です。しかし、喉が渇いてから飲むのでは遅い場合もあります。

建設現場では大量の汗をかくため、水分だけでなく塩分補給も重要になります。スポーツドリンクや経口補水液、塩タブレットなどを活用しながら、定期的な補給を促すことが必要です。

また、「休憩時に飲む」だけでなく、「作業中もこまめに補給する」という意識づけも重要です。現場全体で声掛けを行い、水分補給しやすい環境を整えることが効果的な対策につながります。

4-3. 休憩環境の整備

休憩場所の環境も熱中症対策に大きく影響します。炎天下で作業した後に十分な休息を取れなければ、体温を下げることができず熱中症リスクが高まります。

そのため、冷房設備のある休憩所やスポットクーラー、送風機などを設置し、身体を冷やせる環境を整えることが重要です。また、ミストファンや冷却ベストなどの活用も効果的です。

作業効率を優先して休憩時間を削るのではなく、計画的に休憩を取ることで結果的に安全性と生産性の向上につながります。

熱中症対策例

5. 元請け企業が注意すべきポイント

5-1. 協力会社への周知徹底

建設現場では複数の協力会社が同時に作業を行うケースが一般的です。そのため、自社社員だけ対策を行っていても十分とは言えません。

元請け企業は現場全体の安全管理を担う立場として、協力会社へも熱中症対策の内容を周知する必要があります。朝礼や安全大会、新規入場者教育などを活用し、ルールや対応方法を共有しましょう。

特に、現場ごとに異なるルールがある場合は、誰でも理解できるように明文化しておくことが重要です。

5-2. 無理な工程管理を避ける

熱中症リスクを高める要因の一つが無理な工期設定です。工程がひっ迫すると休憩時間を削ったり、危険な時間帯にも作業を続けたりするケースが発生しやすくなります。

しかし、熱中症による労働災害が発生すれば、結果的に工事全体が止まってしまう可能性もあります。

元請け企業は安全を最優先に考え、猛暑日には作業内容の変更や時間帯の調整など柔軟な対応を検討することが重要です。

5-3. 現場全体で安全文化を作る

熱中症対策は設備やルールだけで実現できるものではありません。現場で働く全員が安全を意識し、異変があれば声を掛け合える環境づくりが重要です。

「体調が悪ければすぐ申告する」「仲間の様子がおかしければ声を掛ける」といった文化が定着すれば、重大事故の防止につながります。

元請け企業には、安全を優先する風土を現場全体に浸透させる役割が求められています。

6. まとめ|これからの建設現場に求められる安全管理

2025年の制度改正により、熱中症対策は個人の体調管理に任せるものではなく、企業が主体となって取り組むべき労働災害対策として位置付けられるようになりました。これからは、熱中症が疑われる作業員を発見した際の報告体制や緊急時の対応手順を整備し、すべての作業員に対して適切な教育を実施することが求められます。

また、建設現場では複数の協力会社が同時に作業を行うケースが一般的です。そのため、自社社員だけでなく協力会社の作業員も含めた現場全体で、熱中症対策を進めることが重要になります。元請け企業と協力会社が連携しながら情報共有や安全教育を行うことで、熱中症による労働災害のリスクを大きく低減できるでしょう。

さらに、安全管理を徹底することは、単に法令を守るためだけではありません。作業員が安心して働ける環境を整えることは、人材の定着や企業の信頼向上にもつながります。人手不足が続く建設業界においては、「安全に働ける会社」であることが企業選びの重要な基準になる可能性もあります。

熱中症対策をコストや義務として捉えるのではなく、会社と従業員、そして協力会社を守るための重要な投資として考えることが、これからの建設会社には求められていると言えるでしょう。

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