店舗改装の目的とタイミング
なぜ店舗改装をするのか、どのような店舗に改装するか、イメージがないまま思いつきで始めてしまうと、効果が出るどころか負担が増えかねません。
まずは店舗改装の目的を明確にし、よりよいタイミングで実施することが重要です。
店舗改装の主な目的
店舗改装の主な目的は、以下の2つです。
・集客力の向上
店舗を改装しお店に合った居心地の良い空間を実現できれば、来店したお客様のリピート率の向上につなげられます。
また、従来の店舗からデザインを変更すると、新規顧客へアピール可能です。これまでお店があるのは知っていたけれど、なかなか訪れる機会がなかった人にとって、お店のリニューアルが来店の大きなきっかけになることもあります。
・店舗の生産性の向上
店舗改装はお客様のためだけではありません。店舗の生産性向上を目的に、商品や内装の配置を変えるなど、働きやすい空間を実現するケースもあります。
店舗を開業した当時、レイアウトや機材については十分に試行錯誤を繰り返して決定しています。しかし、開業当時と同じ状態がずっと続くわけではありません。年数が経つにつれ、商品や機材・備品の変更・増加などが起こります。
定期的にレイアウトを見直し、スタッフが働きやすいよう動線を改善することで店舗営業も効率化できます。スタッフの働きやすさを実現しモチベーションを向上させることは、顧客満足度に直結し結果的に集客力の向上が期待可能です。
店舗改装を行う主なタイミング
店舗改装を行う主なタイミングは複数あり、たとえば以下のようなタイミングで実施します。
- 建物や設備が老朽化したとき
- 売り上げを向上させたいとき
- 提供する商品・サービスやターゲット、業態などを変更するとき
お客様が最初に目にする外装が手入れされていない古びた感じだったり、内装でも傷んだ棚や机などを使い続けていたりすると、清潔感が感じられずお客様の満足度は下がります。
お店の雰囲気に影響が出るほど老朽化した箇所が出てきたら、店舗改装を検討しましょう。
また、店舗改装は集客力の向上につながるため、売り上げを向上させたいときも店舗改装を行うタイミングの一つです。
開業から数年が経ちお店の売り上げが落ち着いてきたところで、お店が抱える課題を洗い出して店舗改装が必要かどうか判断しましょう。
さらに、提供する商品・サービスやターゲット、業態などを変更するときも、店舗改装を行うタイミングです。
提供する商品・サービスや業態に変更が生じた場合、既存の設備や機材が使用できず新たな設備の購入が必要だったり、反対に不要な設備や機材も出てきます。
ターゲットが変われば、ターゲット層が入りやすい外装にすることが必要です。
提供する商品・サービスやターゲット、業態などを変更する際には、合わせて店舗の改装も検討しましょう。
店舗改装をスムーズに行うためのポイント
店舗改装をするには、改装する場所や機材・備品だけでなく、他にも確認しておくべきポイントがいくつかあります。
スムーズに改装を実施するために、事前に考えておきましょう。
予算を設定する
店舗改装をスムーズに行うには、予算の設定が大切です。いきなり店舗を全面改装しようと思っても多額の費用がかかります。
店舗の外装を新しくしたいのか、それとも内装を変えたいのか。内装工事であればその中でも備品を変えたいのか、機材を変えたいのか。備品を変えるのであればどこの備品を変えるのか。改装したい箇所をリストアップして、その範囲をあらかじめ限定しておくのがコツです。
また、改装が店舗の負担になっては意味がありません。改装後の売り上げ増加につながるか、増加した売り上げで改装費用を回収できるか、費用対効果を検討しておくことも必要です。
改装期間を設定する
店舗改装の予算と同時に、改装期間を設定しておきましょう。改装の範囲や箇所にもよりますが、改装中は店舗を休業することが多く、改装期間は売り上げを得られません。
改装のスケジュールを決めるうえでは、余裕をもった設定が必要です。工事が当初の予定通りに進むとは限らないため、期間が長引くことを想定したうえで改装期間を設定してください。
改装工事中に従業員への補償を行う
改装にあたり店舗を休業することになれば、休業時には従業員へ給料の補償が生じます。
労働基準法では、休業期間中は休業手当として少なくとも平均賃金の60%以上を支払うことが定められています。違反すると罰則が科されるだけでなく、従業員との関係悪化にもつながりかねません。
改装自体にかかる費用だけでなく、それに伴う補償についても注意しましょう。
競合店との差別化するポイントを明確にしておく
店舗改装を行ううえでは競合店との差別化を実現できるよう、事前にどのように差別化するか計画しておくこともポイントです。
改装をした結果、競合店と同じようなお店の雰囲気や作りになってしまうと、お客様へのアピールになるどころか、集客が安定しなくなる恐れがあります。
どのようなお客様が来店しているのか、以下のような幅広い情報を収集しておきましょう。
- 性別
- 年齢層
- 来店の曜日や時間帯
- 来店する理由
可能であれば競合店の情報も収集してください。ターゲットとしたい顧客がよりはっきりとします。
建築基準法や消防法などの法律を順守する
店舗改装は目的を実現するために何でも自由に改装できるわけではありません。万一事故や災害が発生した際に被害を拡大させないための措置など、関連する法律にしたがって改装することが必要です。
たとえば建築基準法では、非常用照明装置や排煙設備、換気設備などを設置すること、設置における場所や環境ごとの基準などが細かく規定されています。
消防法では火災の予防や初期消火、人命の救助を目的とした内装の制限や、特に飲食店であれば万全にしておかなければならない消防設備についての基準が設けられています。
法律に違反すると罰則を科せられるだけでなく、場合によっては店舗営業ができなくなる事例もあります。改装で実現したい理想の状態とともに、それが法律を順守しているかどうかも確認しておきましょう。
【業態別】店舗改装にかかる費用相場と工期の目安
店舗改装を行う場合、その費用は1坪あたり10万円~50万円程度が目安です。ただし、店舗デザインやレイアウトに加え、業態によってもその費用や工期は異なります。
以下の表は、「小売店」「飲食店」「美容室・サロン」の業態別に見た、1坪あたりの相場と工期の目安です。
業態 | 1坪あたりの相場 | 工期の目安 |
---|---|---|
小売店 | 10万~40万円程度 | 2カ月~3カ月程度 |
飲食店 | 20万~50万円程度 | 3カ月~4カ月程度 |
美容室・サロン | 20万~50万円程度 | 3カ月~4カ月程度 |
小売店の改装における1坪あたりの費用相場は10万~40万円程度です。工期は2カ月~3カ月程度で完了します。
必要な設備が少ないこと、飲食店や美容室・サロンと違い水回りの設備を必要としない場合が多いことが、費用を抑え工期を短縮できる理由です。
一方、飲食店の改装における1坪あたりの費用相場は、20万~50万円程度です。飲食店の中にもさまざまな種類がありますが、基本的には厨房機器や水回りの設備を必要とする店舗が多く、その分費用が高くなります。また焼肉店や焼き鳥店など、換気にも十分な設備を必要とする場合はその費用も追加されます。
工期の目安は3カ月~4カ月程度です。上記の厨房機器、水回り、換気に関する設備の導入や工事にある程度の工期がかかると想定しておきましょう。
本格的な料理の提供がない飲食店や、簡易的な厨房設備があれば十分なカフェなどは、工期を短く抑えることも可能です。
飲食店と同じく水回りの設備を必要とする美容室・サロンは、1坪あたりは20万~50万円程度の費用相場です。シャンプー台や椅子、鏡など、美容室ならではの設備の導入のための費用が追加されます。
工期の目安は3カ月~4カ月程度です。水回りの設備に関する工事のほか、シャンプー台やパーマ用の機器といった専門的な設備の工事に時間がかかります。
店舗改装の費用を抑える方法
店舗改装にかかる費用は決して安くありません。改装の工期中に生じる補償や売り上げの機会損失を考えると、改装の費用は少しでも抑えたいですよね。
以下では、店舗改装の費用を抑えるコツを紹介します。
店舗改装の一部をDIYで行う
改装にかかる全ての作業を専門業者に任せるのではなく、対応可能な作業はDIYで補うことで費用を節約できます。
DIYの範囲は壁紙の張り替えや塗装、レイアウトの変更など、小規模なものに留めておきましょう。自身で行える作業、また万一失敗した際にも自身でその修復ができる作業を洗い出しておいてください。
水道やガス、電気系統の変更などを伴う大規模・専門的な工事は、安全のためにも専門の業者に依頼が必要です。
補助金・助成金を活用する
店舗改装の工事内容や条件によっては、国や地方自治体などから補助金・助成金を得られる場合があります。補助金・助成金を活用し改装費用を抑えましょう。
以下では、店舗改装に活用できる補助金・助成金制度をいくつか紹介します。
・業務改善助成金
業務改善助成金は、店舗改装にかかった費用の一部を助成してくれる制度です。生産性の向上のために設備投資を行うとともに、事業場内最低賃金(事業場で最も低い時間給)を引き上げる場合に申請できます。
これから実施をするものが助成の対象であること、事業対象者や設備投資の対象には範囲があることなど、受給するにはいくつかの条件を満たさなければなりません。
・事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の事業再構築を支援する制度です。補助対象となる経費には、建物費(建物の建築・改修等)、機械装置・システム構築費、が含まれます。
申請枠は多岐にわたり、どの申請枠に応募するかで受給資格となる必須要件が異なります。事業再構築補助金のサイトや、経済産業省の関連ページを確認し、要点を押さえておきましょう。
参考:https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
・小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、働き方改革や賃上げ等の今後複数年にわたり直面する制度変更に対応するため、小規模事業者等の生産性の向上と持続的発展を目的とした制度です。
地道な販路の開拓等と併せて、業務効率化(生産性の向上)の取組を支援するために、その経費を一部補助します。
補助対象となる経費には機械装置等費(補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等)や、委託・外注費(店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼)が含まれます。
小規模事業者持続化補助金も、受給資格となる必須要件や申請枠が多岐にわたるため、関連サイトの確認が必要です。
参考: https://r3.jizokukahojokin.info/
業者選定時は相見積もりを行う
店舗改装を業者に依頼する場合、一社だけに依頼するのではなく、複数の会社に見積もり依頼をする「相見積もり」を必ず行いましょう。
相見積もりの際、会社ごとに依頼内容を変えてしまうと正確な見積もりの比較ができません。依頼内容は同じにしておく必要があります。
また、会社によって見積もりの項目や記載の形式が異なります。見積もり書をよく確認すると同時に、分からない部分は曖昧なままにせず都度解決しておくことが大切です。
サポートを活用しながら、理想の店舗改装を
店舗改装には、目的やタイミング、予算や工期など、事前にしっかり確認し計画を立てておくべきことが多くあります。
実際に改装が完了するまでハードルが高いように感じますが、丁寧に一つひとつ行うことで、改装にかかる負担を抑えられたり、改装後の生産性や売り上げの向上につなげられます。
自身でしっかりと計画を立てつつ、制度やサービスのサポートも積極的に活用しながら、理想的な店舗改装を成功させましょう。
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