マンションのリフォームに関する基礎知識
マンションは築年数が経過するほど劣化するため、定期的なリフォームが必要です。ただし、リフォームで修繕できる箇所には制約があります。
マンションリフォームで何ができるか・できないかに加え、リフォームの頻度や工事期間について解説します。基礎知識として事前に把握しておきましょう。
マンションのリフォームでできること・できないこと
マンションのリフォームでは、施工できること・できないことがあります。具体的には以下の通りです。
【リフォームでできること:専有部分のリフォーム】
- 室内の壁紙や天井、床
- キッチンやトイレ
- 風呂場、洗面台
- 室内の給湯器やコンロ
- 玄関ドアの内側部分(室内側)
【リフォームでできないこと:マンションの共用部分のリフォーム】
- エレベーター
- 室外に設置してあるサッシ
- 駐車場や駐輪場
- 宅配ボックス
- ゴミ収集場所
- ベランダやバルコニー
- 窓ガラス
- 玄関ドアの外側部分(室外側)
一般的にマンションの専有部分・居住している空間・室内は自由にリフォームできます。バスタブ交換や壁紙の張り替えは、よくある専有部分のリフォームの実例です。ただし、既存の間仕切り壁を撤去したり水まわりの場所を移動したりする大規模な工事は、建物の構造上できない場合があるため、事前にリフォーム業者に相談しなければなりません。
マンションの共用部分はリフォーム不可である旨、マンションの管理規約で規定されている場合が多く見受けられます。居住者が共同で使用するエレベーターなどの設備はもちろん、外に面している玄関ドアや窓ガラスも対象です。
マンションのリフォーム時は専有部分か否かに関わらず、必ず事前に管理組合をはじめとした管理者の承認が必要です。場合によっては専有部分でリフォーム不可の箇所があったり、共用部分で施工可能な箇所があったりします。自分がリフォームしたい箇所が工事可能かどうか事前に相談しましょう。
マンションのリフォームを行うタイミングの目安
マンションリフォームのタイミングは、リフォーム箇所により異なります。以下を実施の目安にしてください。
トイレやキッチンなどの水まわり、 床の補修、ドアの補修 |
10~20年 |
壁紙の交換、給湯器・コンロの交換 | 10年 |
居室全体にかかる大規模なリフォーム | 20~30年 |
一般的に、トイレやキッチンなどの水まわりは、設備の寿命が長くて20年くらいが限度です。水漏れなど目に見える故障がなくても、内部が腐食している可能性を考慮し、10~20年に一度メンテナンスをするのがおすすめです。水まわりにあわせて、床やドアの経年劣化による傷みを考慮し、同じ頻度でリフォームを検討しましょう。
壁紙は窓から差し込む日光の影響で、日焼けしたり変色したりする場合があります。10年を目安に壁材の交換を検討してください。給湯器やコンロは、多くのメーカーが標準使用期間を10年に設定しています。故障が思わぬ事故につながりうるので、10年以上使用している場合は交換・修繕を検討しましょう。また給湯器やガスコンロでは、以下のような症状がある場合にも交換や修繕を検討してください。
【給湯器】
- 温度調整が安定しない
- お湯が出るまでの時間が遅くなった
- いつもと違う音がする
【ガスコンロ】
- ガス臭い
- 炎の色が赤也オレンジ色になる
- ゴム管に亀裂がある
10~20年スパンで施工する際に、ほかに劣化が進んでいる箇所がないかその都度確認しておくのがおすすめです。定期的にリフォームしていても、数十年以上暮らしていると徐々に部屋のあらゆる箇所が劣化していくため、20~30年に一度は大規模なフルリフォームを検討してください。
マンションのリフォームにかかる日数の目安
マンションのリフォームにかかる日数は、リフォーム箇所や内容により異なります。工期の目安は以下の通りです。
<【箇所別】マンションのリフォームにかかる日数の目安>
主なリフォーム箇所 | 日数の目安 |
---|---|
キッチン | 2日~1週間 |
浴室 | 2日~1週間 |
トイレ | 1日 |
壁 | 1日~2日 |
間取り変更 | 1週間~3週間 |
フルリフォーム | 2週間~数カ月 |
キッチンリフォームには大きく2種類あります。ひとつが既存のキッチンの高さを調節して使い勝手をよくするリフォーム、もうひとつがキッチンそのものを取り替えるリフォームです。前者は2日程度で完了する簡易的な施工となり、後者は1週間近くかかる大規模な施工です。リフォーム内容で日数が変わる旨を把握しておきましょう。
浴室や洗面スペースのリフォームは、バスタブの交換や浴室内の床・窓をリフォームする施工内容が含まれます。工事期間内は入浴できません。また、塗装加工を施す場合は工事完了後にしばらくバスタブを使用できない場合があります。工期がどのくらいになるか、施工業者に確認してください。
個室空間のトイレはスペースが狭く、便器を交換するだけであれば1日程度でリフォームが完了します。ただし、和式から洋式へ変更する場合のように、規模が大きくなると工事に1日以上かかります。工事期間中はトイレを使用できない場合がほとんどのため、施工業者へ工期の確認が必須です。
壁のリフォームは、主に壁紙を張り替える施工が該当します。1部屋につき工事期間が1日程度の簡易的なリフォームの場合や、壁の下地補修が必要な際は丸2日かかる場合があります。全部屋まるごと壁を張り替える場合は、2LDK〜3LDKでおよそ1週間、4LDKで10日程度が工期の目安です。
間取り変更は老朽化した部屋を修繕するリフォームというより、より快適な空間へと改善するリノベーションに近い施工です。たとえば、既存の間仕切り壁を取り払ってリビングを拡張するようなケースがあります。レイアウト決定から施工までに最短でも1週間以上かかるため、実施する際はスケジュールを組んでおきましょう。
すべてのリフォーム箇所に共通して、修繕箇所が増えれば増えるほどリフォームにかかる日数が比例して長引きます。長期的かつ大規模なリフォームの場合は、仮住まいが必要である一方、水まわりのみのリフォームなど施工箇所が小規模であれば、室内で暮らしながらのリフォームが可能です。中古マンションの場合は、構造の問題で施工内容が制限されがちなため、事前に業者に調査してもらいましょう。
マンションのリフォームの費用相場
マンションのリフォームは、施工内容により費用の相場が異なります。相場からリフォーム会社の見積りが妥当な金額かどうか判断しましょう。業者選定の参考になるよう、主なリフォーム箇所別にリフォーム費用の相場をまとめました。
<【箇所別】マンションのリフォームの費用相場>
主なリフォーム箇所 | 費用相場 |
---|---|
キッチン | 50万円~300万円 |
リビング・ダイニング | 50万円~500万円 |
和室 | 20万円~100万円 |
浴室 | 80万円~200万円 |
トイレ | 20万円~50万円 |
既存のキッチンを活かし、高さを調節するような施工であれば、50万円程度の予算で完結します。新しいキッチンに取り替えたり、レイアウトから見直したりすると高額になるため、実施したい施工内容にあわせてどのくらいの予算が必要か検討しましょう。
リビングやダイニングのリフォームでは、壁材のクロスを張り替えたり、床をフローリングに張り替えたり、床暖房を設置したりするのが一般的な工事内容です。クロスやフローリングの張り替えは50万円で十分対応できるものの、床暖房設置は床面積・暖房のグレードにより100万円近くの費用になる場合があります。レイアウト変更の大規模なリフォームまで実施すると費用が500万円近くに達するため、事前にリフォーム業者と工事内容・予算の認識を揃えましょう。
住んでいるマンションに和室がある場合、使い勝手がよいように洋室へとリフォームする施工事例があります。和室を洋室にリフォームする場合は、畳からフローリングへの張り替えや、押し入れをクローゼットに修繕する施工がなされます。床材や収納のリフォームであれば、20〜100万円の予算で実施可能です。
浴室のリフォームは、設置する浴槽のサイズ・材質・機能により費用が異なります。既存のバスタブをユニットバスへリフォームする場合は100万円程度です。蛇口や床材まで一つひとつオーダーメイドで決める在来工法の場合は、200万円近くになるケースが増えるため、見積りで費用を確認しておくのがおすすめです。
トイレのリフォームは、排水方法が壁か床かで配管の設置が異なり、設置できる便器や工事方法が変わります。便器・工事方法の違いが価格差に影響するので、リフォーム業者に事前の相談・見積りを依頼してください。
マンションのリフォーム費用を抑えるコツ
マンションのリフォームは、修繕箇所が増えれば増えるほど費用が高額になります。できるだけ低予算で希望通りのリフォームを実現するには、いくつかポイントがあります。
マンションリフォームを進める上で、費用を抑えるコツについて紹介します。
予算や優先順位を決めておく
マンションをリフォームする際は、あらかじめ使える予算や、リフォームする箇所の優先順位を決めておきましょう。リフォーム開始後に新たに施工したい箇所が見つかり、すべてをリフォームしようとするとその分費用がかさみます。リフォーム内容を計画しておけば予算超過することなく進行でき、費用のかけすぎを防止できます。事前に施工業者へ相談し、リフォームで実現したい理想の状態を伝えて、リフォームプランと見積りを出してもらいましょう。
また、リフォームを進める上で施工箇所が追加され当初の想定より予算が増えてしまった場合に備えて、実施するリフォーム工事の優先順位を決めておくのがおすすめです。優先順位の高い箇所から手をつけ必要最低限の工事に絞れます。
マンション自体は経年劣化していくため、長く暮らすには定期的なメンテナンスが必要です。最初のリフォーム時に後回しにした箇所はいつのリフォーム時にまとめて実施するか、計画を立てておきましょう。
まとめてリフォームする
何度も細かくリフォームを繰り返すより、1度にまとめてリフォームする方が、工事費用を抑えられるためおすすめです。水まわりのキッチンや浴室のリフォームのように、同じような作業・施工箇所を同時に進めるのがポイントです。工数の手間を削減でき、費用を抑えられます。
コストダウンのメリットに加えて、部屋全体のデザインに統一感をもたせやすくなったり、施工業者の問い合わせ先が共通になってやり取りしやすかったりするメリットが得られます。
減税制度や補助金を活用する
リフォーム内容によっては、国や地方自治体が推奨している減税制度・補助金・助成金を活用し、リフォーム費用を抑えられます。
国が定めた「住宅借入金等特別控除」という制度では、国が定めた基準に該当するリフォームについて下記のような要件を満たす場合、所得税や固定資産税の減税措置を講じる旨が明記されています。
- リフォームローンを組んで行うリフォーム
- 耐震リフォームやバリアフリーリフォームなど特定のリフォーム
- 親族から住宅取得資金などの贈与を受けるリフォーム工事(贈与税の非課税措置を適用する場合がある)
リフォームの減税制度については、国土交通省のホームぺージに利用可能な税制特例としてまとめられています。確定申告で制度を利用できる場合があるため、リフォーム検討時に調べておきましょう。
減税制度のほか、補助金・助成金を利用できるケースがあります。主な補助金・助成金事業を以下にまとめました。
- 住宅エコリフォーム推進事業|国土交通省
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業|国土交通省
- 子育て支援型共同住宅推進事業|国土交通省
- 既存住宅における断熱リフォーム支援事業|環境省
- 次世代省エネ建材の実証支援事業|経済産業省
- 介護保険法にもとづく住宅改修費の支給|厚生労働省
それぞれ認定条件や申請時期が決まっており、随時情報がアップデートされます。国・地方自治体で活用できる補助金・助成金制度は下記のページに掲載されていますので、リフォーム時に参照してください。
マンションをリフォームする際の注意点
マンションのリフォームを進める上で、工期や費用以外に注意すべきポイントがあります。場合によってはそもそもリフォームが進められなくなったり、予期せぬトラブルに発展したりしかねないので要注意です。
以下が主な注意点3つです。
管理組合に申請を出す
マンションをリフォームする際は、必ずリフォーム前に管理組合に申請を出し、管理者からリフォームの許可を得てください。リフォームする箇所・内容に関わらず、いかなる場合でも管理者の許可が必要です。
マンションのリフォームについては、マンション個別のルールが管理規約で設けられています。一般的に専有部分であれば自由にリフォーム可能であっても、マンションの規約上不可である場合があるため、事前確認を怠らないようにしましょう。
管理組合から許可がおりるまでに時間を要する場合があります。申請方法の確認をかねて、早めに打診するのがおすすめです。
近隣の住民に知らせる
近隣の住民にはマンションをリフォームする旨あらかじめ伝えて、挨拶を済ませておきましょう。
リフォーム内容によっては、施工中に騒音・振動が発生します。思わぬ近隣トラブルに発展しかねないため、工事内容と工事期間を事前にお知らせし、配慮の気持ちを示すのがマナーです。
リフォーム業者によっては、近隣への挨拶を代行したり、粗品を準備してくれたりするサービスを提供しています。近隣との付き合いを考えると、挨拶は居住者自身で出向くのがおすすめです。手土産は工事期間が長引きそうであれば手渡すよう、予算に応じて検討してください。
リフォーム内容によっては仮住まいを用意する
家具の撤去が必要だったり、風呂などの設備を交換したりする場合など、リフォーム内容によっては、暮らしに必要な家具・設備が一時的に使えません。工事期間が長引く場合は、泊めてもらえる親戚宅を探したり、ホテルや短期賃貸マンションを契約したり、工事期間内に生活できる仮住まいを探してください。
水まわりのみのリフォームをはじめ、小規模なリフォームで生活に支障がない場合は、仮住まいを探さずリフォーム中の自宅で暮らしながら施工を進められます。
事前に仮住まいの用意が必要か業者に確認しておきましょう。
マンションリフォームの基礎知識をおさえて、理想の住まいを実現しよう
マンションのリフォームは、施工箇所・工事内容により工期や工事費用が大きく変動します。
自身が実現したい理想の状態を明確にイメージし、施工業者と相談の上、適切な施工プランと予算感で進行しましょう。管理組合への申請や近隣への周知など、注意すべきポイントをおさえ、快適な暮らしを実現してください。
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