外壁コーキングの基礎知識
自宅や建物のリフォームを検討する上で、外壁コーキングがどういう内容の工事でどういった効果が得られるのか、正しく理解する必要があります。
施工をスムーズに進められるよう、外壁コーキングの基礎知識を解説します。
外壁コーキングとは?
外壁コーキングとは、外壁の隙間や継ぎ目である目地を埋める施工のことです。外壁のひび割れを防いだり、以前に打ったコーキングが劣化したときに実施されます。
外壁コーキングは、目地に樹脂系の充填剤を流し込み隙間を埋めていく施工です。充填剤はコーキング材と呼ばれ、弾性や柔軟性に優れた性質をもっています。サイディングボードやALCパネルといった建物によく用いられる壁材に使用できる製剤です。
隙間を埋めて見栄えがよくなるだけでなく、外壁の防水性・耐久性の向上につながるため、住宅をはじめとする多くの建物で実施されています。
外壁コーキングの目的
外壁コーキングの主な目的は、以下の2つです。
- 外壁どうしがぶつかって衝突・破損するのを防ぐため
- 雨の影響による壁の腐食を防ぐため
昼夜の気温差や気候変動により、外壁内部の水分が蒸発して壁自体が膨張します。外壁どうしが隙間なく並べられている場合、壁材の膨張で隣り合う外壁が衝突したり、破損・ひび割れを起こしたりするので注意が必要です。
外壁コーキングは、外壁どうしの隙間に充填したやわらかなコーキング材が、衝撃を吸収する緩衝材の役割を果たします。結果、壁の膨張による外壁材どうしの衝突や破損が防げます。
外壁の破損防止に加えて、雨の影響から外壁を守るのが外壁コーキングの目的です。コーキング材は防水性に優れており、外壁の隙間・継ぎ目からの雨漏りを防ぎます。結果、水分による外壁の腐食を防ぎ、建物全体を安全に維持することが可能です。
その他、外壁コーキングにより空調効果に関するメリットが期待できます。外壁どうしをコーキング材で密閉すると、気密性が高くなり建物内の冷気や熱が逃げません。年中快適に過ごすために、外壁の状態を常に確認し、補修が必要な場合は外壁コーキングを検討してください。
コーキングとシーリングの違い
コーキングと似た言葉に「シーリング」があります。コーキングとシーリングは、どちらも隙間を埋める施工なので、同じ意味の言葉だと理解してください。
厳密に日本語訳すると、以下の通りです。
コーキング:隙間や穴へ詰め物をすること
シーリング:密閉すること
建築現場では、コーキングとシーリングに大きな違いはなく同義語として使用しています。業者に依頼する際は、言葉の使い分けを気にする必要はありません。
外壁コーキングの主な種類
外壁コーキングは使用するコーキング材の違いにより、活かせる場面やメリット・デメリットが異なります。
状況に応じて適切な施工が選択できるよう、外壁コーキングの主な種類を解説します。
アクリルコーキング
アクリルコーキングは、アクリル系のコーキング材を用いた外壁コーキングです。
アクリル系のコーキング材は水性で水に強く、湿度が高い地域での使用に適しています。扱いが容易で、紫外線に強くコーキング材の上から塗装する必要がないため、DIYで外壁コーキングを実施する場合によく使われます。
他のコーキング材と比べて耐久性や耐候性が低く、硬化する際に水分が飛び、ひび割れしやすくなるのがデメリットです。日差しが強く差し込むような外壁への使用には適さないので注意が必要です。
ウレタンコーキング
ウレタンコーキングは、ウレタン系のコーキング材を用いた外壁コーキングです。
ウレタン系のコーキング材は、耐久性と密着性に優れています。硬化すると、ゴムのような弾力性が生じ剝がれにくくなるのが特徴です。コンクリート外壁をはじめ、さまざまな建物の外壁に向いています。
紫外線に弱いため、日差しが差し込む立地の建物であればコーキング材の上から塗装する必要があります。乾燥させるため施工期間が追加で3〜7日間かかり、その間に紫外線が当たらないよう注意しましょう。
シリコンコーキング
シリコンコーキングは、シリコン系のコーキング材を用いた外壁コーキングです。
シリコン系のコーキング材は、耐久性に加えて耐熱性や耐水性に優れています。価格が安価であるため、コストパフォーマンスに優れ、浴槽やキッチンといった水回りのコーキングに重宝されます。
シリコンコーキングの場合は、上から塗料を塗るとシリコンが弾き、コーキング材の上から塗装ができないため、注意が必要です。外壁を塗装しておしゃれに仕上げたい場合は、シリコンコーキング以外の外壁コーキングを検討してください。
変成シリコンコーキング
変成シリコンコーキングは、ポリエステル・ウレタン系のコーキング材を使用した外壁コーキングです。名前が似ているシリコンコーキングとは、コーキング材や特徴が異なるため、DIYで外壁コーキングを実施する場合は注意してください。
変成シリコンコーキングは、コーキング材が硬化するまで3日ほどしかかからず、雨風や温度変化による影響で劣化しにくいのが特徴です。耐久性に優れており汚れにくい点から、野ざらしになる外壁のコーキングに向いています。また、コーキングの上から塗装可能である点が、シリコンコーキングとの大きな違いです。
シリコン系コーキング材より耐久性が低く、ウレタン系コーキング材と比べると密着しにくいデメリットがあります。価格は他のコーキング材と比べて高額です。紫外線に弱く、コーキングの上から塗装しておく必要があります。
外壁コーキングの寿命の目安と補修すべき劣化症状
外壁コーキングは、コーキング材の劣化具合の確認および定期的な補修が必要です。コーキング材の寿命は、種類や気候・立地条件により異なります。
コーキング材が劣化する目安や補修すべき劣化の症状について理解し、適切なタイミングで自宅・建物の外壁コーキングを施工しましょう。
外壁コーキングの寿命の目安
外壁コーキングの寿命は約5~15年程度が目安です。寿命の主な原因は、紫外線や雨風に晒され続けることが関係しています。
コーキング材には、弾性をもつ可塑剤や壁の隙間で固まるための硬化剤をはじめ、さまざまな添加剤が含まれています。外壁の隙間で弾力性を発揮したり、緩衝材の役割を果たしたりするのは、コーキング材の添加剤のおかげです。
ただ、コーキング剤の添加剤は紫外線に弱く、外気に晒され続けることで劣化し徐々に弾力性を失います。さらに暴風雨により添加剤が外部に染み出し、劣化がさらに進みます。結果、約5~15年でコーキング材は寿命を迎えます。
コーキング材の寿命は、外壁コーキングの種類により異なります。詳しい目安は以下の通りです。
アクリルコーキング……5年
ウレタンコーキング……約5~10年
シリコンコーキング……約10年
変性シリコンコーキング…約10~12年
ウレタン系のコーキング材の中でも、ポリウレタン系の製剤の寿命は約15年です。直近では耐久年数20年以上の製剤がリリースされていますが約5~15年がコーキング材の平均的な寿命であるため、外壁コーキングを次回施工するタイミングの目安としてください。
種類の違いに加え、コーキング材のグレードにより耐久性が異なります。グレードは日本産業規格(JIS)が「耐久性区分」として設定し、認証を受けたコーキング材はパッケージなどに区分を表示して販売します。
区分に付与されている「7020」「8030」は、正式な手順で行った実験結果により示された、耐久性の高さを示す数値です。最も耐久性に優れたコーキング材には「10030」の区分が付与されています。使用するコーキング材を決める際は、JIS認証マークに着目してください。
参考)JIS 耐久性区分の比較
下2桁の数字は「マイナス20°の環境で耐えられた圧縮率」を示す。
上の桁は「20%の圧縮率で負荷をかけても耐えられる温度」を示す。
上下の桁で数値が高いほど、比例して耐久率が高いことを示す。
7020 > 7030 (低温実験の結果、8030区分の方が高い耐久性をもつと評価)
7020 > 8020 (高温実験の結果、8030区分の方が高い耐久性をもつ)
5~15年という数字はあくまで目安であり、予定より早期に劣化する可能性があります。以下の場合は早くに劣化する可能性があるため、注意が必要です。
- 施工不良で、コーキング材の上から塗装していない
- 日当たりのよい場所に建物がある
- 台風にさらされた
定期的にコーキング材の劣化状況をチェックし、補修のタイミングを計ることが重要です。
補修が必要になる主な劣化症状
以下の症状は、コーキングの劣化が進んだ状態を示しています。補修を実施する目安になるので、定期的に確認するのがおすすめです。
・変色
コーキング材が変色し、黒ずんでいる状態です。コーキング材に含まれる添加剤のひとつで、弾性をもつ可塑剤が溶け出し、空気中の埃を吸着することで黒く変色します。可塑剤が溶け出して起こる変色が「ブリード現象」です。
変色している状態は可塑剤が外へ溶け出している状態ですので、コーキング材の弾性が低く、耐久性・防水性が低下しています。見た目が悪いだけでなく機能に影響するため、外壁コーキングで補修してください。放置するとさらに可塑剤が溶け出し、変色の範囲が広がりかねません。
尚、施工の段階で変色を防ぐ製剤が存在します。塗布すると予防につながるので、必要に応じて検討してください。
・破断
破断とは、コーキング材が真ん中で裂けている状態です。前段階としてひび割れが発生し、進行すると大きな亀裂となり破断へとつながります。
コーキング材が劣化し、寿命を迎えた状態です。隙間が生じているため、防水機能は失われており、雨水の侵入を防げません。
隙間から侵入した雨水が建物の内部に到達すると急速に劣化が進むため、破断を発見した際は早急な補修が必要です。
・剥離
コーキング材がやせて端から剥がれ、外壁とコーキング材との間に隙間がある状態です。ひび割れが悪化すると、剝離が発生します。
隙間があるためコーキング材本来の役割を果たせず、防水機能が失われている状態です。隙間から侵入した雨水が建物に達して劣化を早めるだけでなく、シロアリが侵入したり建物が腐食したりする可能性があります。
剥離を発見した際は、早急に補修してください。
外壁コーキングの補修の際の費用相場
外壁コーキングの補修には「打ち替え」と「増し打ち」という2種類の工法があり、施工内容・補修費用が異なります。理想とする修繕内容と予算にあわせて、適切に工法を選べるよう、補修方法別に概要・費用相場を紹介します。
2つの補修方法の特徴を理解し、補修費の総額を抑えつつ、建物の寿命を伸ばしましょう。
打ち替えの費用相場
外壁コーキングの「打ち替え」の概要・費用相場は、以下の通りです。
概要 | 古いコーキング材を撤去して、新しいコーキング材を打つ工法 |
費用相場 | 約46~68万円 ∟新しいコーキングの設置費用:約30~45万円 ∟古いコーキングの撤去費用:約1~3万円 ∟工事用の足場費用:約15~20万円 |
打ち替えは、寿命となったコーキング材をすべて撤去した後に、新しくコーキング材を打つ工法です。劣化して古くなったコーキング材を新品と交換するため、防水性や耐久性を大きく改善できます。
一般的な住宅での工事費用の目安は30万~45万円程度です。工期が長くなる分、工事費が値上がりします。工事費用の他に、寿命を迎えたコーキング材の撤去費用が1~3万円、と足場代が15~20万円かかります。総計で約46~68万円が費用相場です。
「増し打ち」より高額になるものの、施工後の寿命は7~15年程度まで長持ちし、次の補修までの期間を大幅に伸ばせます。
補修工事の費用を確定させるには、工事を依頼する専門業者に外壁の状態を確認してもらった上で、見積りを出すよう依頼します。業者により費用の算出が変わるため、相見積りで複数の業者から見積りを比較し決めるのがおすすめです。
尚、外壁塗装工事や他の箇所のリフォームと同時に施工すると、足場の設置が1回にまとめられるため、手間がない分補修・修繕トータルの費用が若干安く済みます。少しでも費用をおさえたい場合は検討してください。
増し打ちの費用相場
外壁コーキングの「増し打ち」の概要・費用相場は、以下の通りです。
概要 | 古いコーキング材の上から、新しいコーキング材を打つ工法 |
費用相場 | 約39~57万円 ∟新しいコーキングの設置費用:約24~37万円 ∟工事用の足場費用:約15~20万円 |
増し打ちは、古くなったコーキング材の上から重ねるようにして新たなコーキング材を打つ工法です。古いコーキング材を撤去する工程が減る分、打ち替えより安価で施工できます。
費用相場の目安は約24万~37万円です。他に足場代約15~20万円が別途必要で、工事全体では約39~57万円かかります。
古いコーキング材は修復せずそのまま残るため、施工後の耐久年数は2~5年程度しかもちません。安全性・長期的にかかる工事費用を考えると打ち替えを選んだ方が安心です。
ただし、窓やサッシ周りのコーキングは必ず増し打ちで工事してください。古いコーキング材を無理に取り除くと、窓やサッシ周りにある防雨紙という部分を傷付け、雨漏りを引き起こす懸念があります。また、壁どうしがぶつかるへこみ部分(入隅)は、構造上古いコーキングを撤去できないため、窓やサッシ周り同様に増し打ちで外壁コーキングを施工します。
打ち替え同様、業者選定時は相見積りをとり費用を比較して決定してください。
外壁コーキングの費用・修繕方法を理解し、適切な施工で建物を長持ちさせよう
外壁間の隙間に充填したコーキング材は、緩衝材の役割を果たし外壁どうしの衝突・破損や雨漏りから建物を守ります。コーキング材が経年劣化すると建物を守る機能がどんどん失われるため、壁の症状を把握しつつ外壁コーキングを検討する必要があります。
外壁コーキングが必要になる劣化のサインを見逃さず、打ち替え・増し打ちの内容・費用相場の違いを踏まえて適切なコーキングを施工しましょう。
「10年くらい何もしていないんだけど、そろそろ補修した方がいいのかな…」
「古くなってきたから施工したいんだけど、どう進めていいかわからない…」
「できるだけ予算にあわせて、適切な工事をしてくれる業者にお願いしたい…」
外壁コーキングについて悩みがあれば、工事やリフォームを無料で一括見積ができる「ミツマド」がおすすめです。
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