2024.04.04

断熱リフォームで活用できる補助金・助成金│申請の流れと注意点

断熱リフォームで活用できる補助金・助成金│申請の流れと注意点

「断熱リフォーム」は、夏は涼しく、冬は暖かな住まいを作りたい人に、おすすめの取り組みです。
電気代の節約や結露・カビ発生の抑制、高い機密性による騒音の低減、チリやホコリが侵入しにくくなるなどのメリットが期待できます。

いいこと尽くめの「断熱リフォーム」ですが、高機能な建材を使って工事するぶん、費用が高額になりがち。そこで着目したいのが断熱リフォームにかかる「補助金・助成金」と「所得税・固定資産税の特例措置」です。

この記事では断熱リフォームに関連する「補助金・助成金」と「所得税・固定資産税の特例措置」の制度について紹介・解説します。費用を抑えつつ暮らしをより快適に向上させるための情報収集をはじめましょう。

目次

断熱リフォームに利用できる主な補助金・助成金制度

日本政府は2050年までに、CO2削減によるカーボンニュートラル(温室効果ガスを減らしてゼロにする取り組み)を目標に掲げています。ひとつの手として注目されているのが「断熱化」です。

行政は目標を達成するために、次世代の省エネルギー建材を開発して、温室効果ガスの排出を最小限に抑える家作りに役立てる対策を打ち出しています。
それに伴い、より多くの人に省エネ建材の導入をしてもらえるよう、断熱リフォームに役立つ補助金・助成金の交付を実施しています。

下記は、現在、公表されている主な制度です。

  • 既存住宅における断熱リフォーム支援事業(二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金)
  • 先進的窓リノベ2024事業
  • 子育てエコホーム支援事業
  • 地方自治体独自の補助金・助成金制度

それぞれについて説明します。

既存住宅における断熱リフォーム支援事業(二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金)

2022年より環境省の主導でスタートした補助金事業で、省エネ効果が見込める高性能建材を用いた、住宅のエコリフォームを支援します。対象の改修工事にかかる経費の一部に、補助金が交付されます。

補助対象となる主な建材は、「断熱材・窓・ガラス」です。
外張り断熱など住宅全体を改修する「トータル断熱リフォーム」のほか、居間の窓だけを改修する「居間だけ断熱リフォーム」でも交付を受けられます。
補助率は対象費用の3分の1以内、上限額は戸建て住宅なら120万円、マンションなどの共同住宅なら1住戸あたり15万円です。

加えて、下記の設備導入も補助の対象です。

  • 熱交換型換気設備等 5万円まで(工事費用は対象外)
  • 家庭用蓄電システム 20万円まで(工事費用は対象外 )※戸建住宅のみ
  • 家庭用蓄熱設備 20万円まで ※戸建住宅のみ
  • 玄関ドア 20万円まで ※集合住宅のみ

「2024年度の既存住宅を対象とした断熱リフォーム支援事業」の受付は2024年の1月24日から3月1日までで終了しており、2024年3月10日現在では次回の公募の情報は公表されていません。

<制度の主な利用条件>
・省エネ効果が15%以上見込まれること
・対象製品を用いていること
・申請者自身が常時居住する住宅であること
・申請者が所有する住宅であること
・既存の住宅であること
・専用住宅であること(店舗・事務所との併用は不可)
・居間だけ断熱のリフォームの場合には、居間(日常生活の中心であり、家族全員の滞在時間が最も長い居室)を必ず改修すること

【出典】「【全国対象】既存住宅における断熱リフォーム支援事業」(公益財団法人北海道環境財団)

先進的窓リノベ2024事業

先進的窓リノベ2024事業とは、断熱性能向上が見込める省エネ建材による「窓断熱」の推進事業です。
国土交通省・経済産業省・環境省が連携して推進する「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環で実施されています。

熱が逃げやすい開口部(窓・ドア)リノベーションの促進事業で、複層窓などの建材には高いグレードが求められ補助金額が高めに設定されているのが特徴です。

補助対象は窓(ガラス・サッシ)・ドアの断熱リフォームで、気象庁が定める熱貫流率を満たす工事である必要があります。

補助限度額は200万円で、費用の2分の1相当の定額補助を受けられます。2024年12月31日までに完了する工事のみに適用されるため、事前に工事のスケジュールを確認しておきましょう。

先進的窓リノベ2024事業の申請者は「リフォーム事業者(施工業者)」です。
補助金は「リフォーム事業者が事務局より交付を受け、住宅の所有者のもとに還元する」という手順を踏みます。

申請は2024年3月中下旬からの予定で、予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日まで)の受付です。

<制度の主な利用条件>
・既存住宅であること
・対象製品を用いていること
・窓リノベ事業者と工事契約を結び、断熱窓にリフォームすること
・リフォーム工事をする住宅の所有者等であること
(所有者とは、住宅を所有して住んでいる人またはその家族、住宅を所有して賃貸住宅として供する個人または法人、賃借人、集合住宅等の管理組合、管理組合法人を指す)
・合計補助額が5万円以上であること

【出典】「住宅省エネ2024キャンペーン 先進的窓リノベ2024事業」(環境省)

子育てエコホーム支援事業

子育てエコホーム支援事業とは、子育て世帯※1や若者夫婦世帯※2の「高い省エネ性能を有する新築住宅の取得」や「省エネリフォーム」に対する補助制度です。
子育てエコホーム支援事業も先進的窓リノベ2024事業と同じく「住宅省エネ2024キャンペーン」の一環で、リフォームに関しては子育て世帯や若者夫婦世帯でなくても審査・交付を受けられます。

※1:18際未満の子どもを有する世帯
※2:夫婦のいずれかが39歳以下の世帯

新築住宅を取得する場合の補助上限は「長期優良住宅」で100万円、「ZEH住宅」であれば80万円です。
リフォームの補助上限は原則1戸あたり20万円に設定されていますが、子育て世帯または若者夫婦世帯であれば30万円、既存住宅の購入を伴う場合には60万円まで引き上げられます。

リフォームの対象建材・設備の一部は「先進的窓リノベ2024事業」や「給湯省エネ2024事業」、「賃貸集合給湯省エネ事業」と併用が可能です。
ただし、「リフォーム箇所や工事内容が重複していない」ことが条件のため、工事内容の確認が必要です。

子育てエコホーム支援事業の申請者は「住宅省エネ支援事業者」です。
住宅の所有者は契約を締結した省エネ住宅支援事業者を通じて補助金を受け取ります。

対象となる着工日は2024年3月中下旬から予算上限に達するまで(遅くとも2024年12月31日)です。

<制度の利用条件>

【新築住宅】
・子育て世代または若者夫婦世帯であること
・エコホーム支援事業者と不動産売買契約を締結し、新築分譲住宅を購入(所有)すること
・証明書等により「認定長期優良住宅」あるいは「ZEH住宅」に該当することが確認できること
・所有者(建築主)自らが居住すること
・住戸の床面積が50平方メートル以上、240平方メートル以下であること
・土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域または災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域または地すべり防止区域と重複する区域に限る)に原則立地しない住宅であること
・都市再生特別措置法第88条第5項の規定により、当該住宅にかかる届出をした者が同条第3項の規定による勧告に従わなかった旨の公表がされていない住宅であること
・(新築分譲住宅の購入のみ)不動産売買契約締結時点において、未完成または完成から1年以内であり、人の居住の用に供したことのない住宅であること
・交付申請時に、一定以上の出来高の工事完了が確認できること

【リフォーム】
・エコホーム支援事業者と工事請負契約等を締結し、リフォーム工事をすること
・リフォームする住宅の所有者等であること
(所有者とは、住宅を所有して住んでいる人またはその家族、住宅を所有して賃貸住宅として供する個人または法人、賃借人、集合住宅等の管理組合、管理組合法人を指す)
・以下のいずれかの工事をすること
  *開口部の断熱改修
  *外壁、屋根・天井または床の断熱改修
  *エコ住宅設備の設置
・合計補助額が5万円以上であること

【出典】「住宅省エネ2024キャンペーン 子育てエコホーム支援事業」(国土交通省)

地方自治体独自の補助金・助成金制度

お住まいの地域によって、自治体が独自に補助金や助成金の制度を施行している場合があります。
財源や申請内容が重複する事業を除いて併用できるケースがあるので、管轄となる市区町村の担当課に問い合わせてみましょう。

インターネットでは各地方公共団体の支援制度を種類別に無料で検索・閲覧できるサイト (外部リンク「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和5年度版)」(一般社団法人住宅リフォーム推進協議会))が公開されています。事前の調査にお役立てください。

【参考】「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和5年度版)」(一般社団法人住宅リフォーム推進協議会)

断熱リフォームに利用できる主な税金の特例措置

断熱リフォームに対する国の支援は補助金や助成金の「交付」だけではなく、「税制」の視点から受けることもできます。
現在施行されている主な税金の特例措置は次の通りです。

所得税の特例措置

既存住宅の「耐震・バリアフリー・省エネ・三世代同居・長期優良住宅化」のリフォーム費用の一部を所得税から控除する特別措置です。
国交省の「令和6年度国土交通省税制改正概要」に盛り込まれていて、断熱リフォームは「省エネ」と「長期優良住宅化」に該当します。

「省エネ」リフォームで特例措置を受けるためには「窓の断熱改修」が必須です。
そのほかに「床の断熱、天井の断熱、壁の断熱」や「太陽光発電装置の設置」、「高効率空調機・高効率給湯器・太陽熱利用システムの設置」の工事が対象です。
最大控除額は原則25万円ですが、必須工事の「窓の断熱改修」と同時に「太陽光発電装置」を設置すると35万円まで引き上げられます。

「長期優良住宅化」は、家屋の劣化対策「耐久性能向上」の工事と同時に、省エネ化や耐震性能向上の工事を施すリフォームです。
長期優良住宅化リフォームの最大控除額は、耐久性+省エネ+耐震工事の3つを実施した場合で原則50万円(太陽光発電装置の設置で60万円に引き上げ)、耐久性+省エネ工事または耐久性+耐震工事の組み合わせで原則25万円(太陽光発電装置の設置で35万円に引き上げ)です。

これらの控除は「住宅ローン減税」や「長期優良住宅化リフォームにかかる所得税額の特別控除」と併用できません。

それぞれ適用を受けるための主な要件は下記の通りです。

  • 申請者が所有し、居住する家屋であること
  • 工事完了から6か月以内に居住すること
  • 床面積が登記簿表示上で50平方メートル以上あること
  • 店舗等との併用住宅の場合は床面積の2分の1以上が居住用であること*合計所得金額が3,000万円以下であること

【出典】「令和6年度国土交通省税制改正概要」(国土交通省)P21

固定資産税の減額措置

既存住宅に対して省エネ改修を施した場合に、工事完了年の翌年度分の住宅にかかる固定資産税の3分の1が減額される減税制度です。 工事をした住宅が「認定長期優良住宅」に該当すれば減額割合が3分の2まで引き上げられます。

固定資産税の減額措置を受けるための必須工事は「窓の断熱改修」です。 窓以外は、「床の断熱、天井の断熱、壁の断熱」や「太陽光発電装置の設置」、「高効率空調機・高効率給湯器・太陽熱利用システムの設置」の工事が対象です。

減額措置を受けるための主な要件は次の通りです。

  • 2014年4月1日以前から所在する住宅であること
  • 省エネリフォーム後の床面積が50平方メートル以上、280平方メートル以下であること
  • 店舗等との併用住宅の場合は床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 省エネリフォーム後の断熱改修部位がいずれも平成28年省エネ基準相当に新たに適合すること
  • 総工事費用が税込60万円を超えていること
  • 2026年3月31日までに工事を完了すること

【出典】「令和6年度国土交通省税制改正概要」(国土交通省)P22

断熱リフォームにおける補助金・助成金の申請の流れ

断熱リフォームの補助金・助成金が交付されるまでの手続きの流れは、主導する組織や制度によって異なります。

たとえば「住宅省エネ2024キャンペーン」における事務局への申請者は、リフォーム事業者です。この場合、消費者の窓口は事務局ではなくリフォーム事業者です。
利用したい制度の申請方法を事前に確認しておくことで、申請漏れなどのトラブルを防げます。

一般的な断熱リフォームの補助金申請から交付までの流れは次の通りです。

  1. 断熱リフォームを支援する登録事業者に問合わせる
  2. 補助金制度の公式ホームページなどから申請様式を入手し提出書類を作成する
  3. 工事と補助金にまつわる契約を締結する
  4. リフォーム着工、リフォーム事業者は事務局に交付申請の予約をする
  5. 各種証明書や必要書類を受け取る
  6. 工事完了・引き渡し、リフォーム事業者は事務局に交付申請をする
  7. 交付決定通知を受け取り、リフォーム事業者は事務局に実績報告書を提出する
  8. 事務局からリフォーム事業者を介して補助金を受領する

リフォーム事業者を介して補助金・助成金の申請をする場合は、補助事業に登録しているリフォーム事業者が、事務局への申請手続きを請け負います。

断熱リフォームの補助金・助成金制度を活用するときの注意点

断熱リフォームの補助金・助成金制度の利用には、注意すべき点があります。主なポイントは次の通りです。

リフォーム会社へ事前相談したほうが良い

断熱リフォームの補助金・助成金制度の多くは、支援事業に登録したリフォーム事業者の施工する工事のみを対象とします。
利用したい制度がある場合には依頼を検討しているリフォーム会社が事業者登録を済ませているかを事前に確認しましょう。

着工後では申請できないことが多い

補助金・助成金制度は、着工後の申請を認めていない場合がほとんどです。
工事請負契約を締結する前にリフォーム業者へ、希望する補助金・助成金制度の対応が可能か確認しておきましょう。

申請期間に注意する

補助金・助成金制度によっては申請期間が短く設定されていたり、予算上限が設けられていたりします。
期間内であっても申請が打ち切られてしまうことがあるので注意が必要です。

補助金の併用が可能かを確認する

リフォーム工事の内容が重複している場合や、財源を同じくする補助金・助成金などでは、制度の併用ができない場合があります。
断熱リフォーム支援事業の公式ホームページでは、併用の可否がまとめられた一覧表が掲載されている可能性があるので、あらかじめ申請条件を確認してください。

断熱リフォームの補助金・助成金制度を上手に活用して、かしこい断熱リフォームを目指そう!

2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスを減らしてゼロにする取り組み)を達成するために、国は、住宅の省エネ化を推進したいと考えています。

そのために、多くの資金を投入してさまざまなリフォーム支援制度を立ち上げています。現在は、断熱リフォームを検討している人にとって、追い風が吹いている状況です。

この機を逃さず、断熱リフォーム補助金・助成金についての知識を広げて上手に活用し、「快適性」と「経済性」を兼ね備えた住宅を実現しましょう!

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