トタン屋根の特徴と種類
そもそもトタン屋根とはどのような特徴があるのでしょうか。リフォームを成功させるためにも基礎知識を深めましょう。
トタン屋根とは?
トタン屋根とは、トタン板が素材に使われている屋根のことで、鋼板(ブリキ)に亜鉛メッキを施した金属屋根の一種です。
日本瓦に比べて購入価格が安く施工期間が短かかったため、高度経済成長期あたりの1980年代初めまで主流の屋根材でした。しかし、現在ではサビに強くなったスレートやガルバリウム鋼板の登場によりあまり使われなくなっています。
トタン屋根が使用されている具体例には、昔ながらの住宅や倉庫、工場があります。
トタン屋根の施工方法には「瓦棒葺き」「波板」「折板」があり、それぞれ屋根の強度が異なるのが特徴です。
トタン屋根のメリット・デメリット
トタン屋根を選ぶメリットとデメリットを解説します。
・トタン屋根のメリット
トタン屋根を使用するメリットは以下の5つです。
- 耐震性に優れている
- 買い求めやすい価格
- 施工費が安価で工期も短い
- 雨漏りしにくい
- 耐火性に優れている
・耐震性に優れている
トタン屋根は軽いため耐震性に優れています。
地震による家の倒壊は屋根の重さが原因の一つです。地震で家が揺れた際に屋根が重たいと家の揺れが大きくなり、家を支える柱が折れやすくなってしまいます。
トタン屋根を使用すれば、屋根を軽量化して家の重心を下げられるため揺れを軽減することが可能です。
地震対策ができるため、高齢者や障がい者など逃げ遅れやすい人にとって安心感のある家にリフォームすることができます。
・買い求めやすい価格
トタン屋根の価格相場は1平米あたり4,500円からとなっており、買い求めやすい価格です。
現在主流のスレート屋根やガルバリウム鋼板は1平米あたり5,000円〜8,000円が相場です。
トタン屋根のほうが500円〜3,500円安いため、広範囲にわたる屋根のリフォームやあまり予算をかけられない方に向いています。
・施工費が安価で工期も短い
トタン屋根は加工しやすく取り扱いやすい素材です。加工しやすい素材は工賃が安く、なおかつ工期も短くて済みます。その結果、トータル的にかかる施工費を抑えられます。
トタン屋根は、屋根リフォームをなるべく早く安くで済ませたい方におすすめです。
・雨漏りしにくい
トタン屋根は、大きな金属板をつなぎ合わせる手法であるため、施工して継ぎ目を小さくできます。そのため雨漏りがしにくいのがメリットです。
トタン屋根は、日本の降水量や降雪量が多い石川県や福井県、富山県などで生活している方にもおすすめです。
・耐火性に優れている
トタン屋根は性質が金属であるため、耐火性に優れた屋根材です。金属板は飛び火による燃え移りに強い性質を持ちます。
なお、トタン屋根は建築基準法にて不燃材料と認定されています。
ガス火を使用しているご家庭、周辺に飲食店がある家は、トタン屋根にすると火事の発生時に燃え広がりを防止できるためおすすめです。
・トタン屋根のデメリット
トタン屋根を使用するデメリットは以下の3つです。
- 耐熱性が低い
- 雨風の音が反響しやすい
- 耐久年数が短くメンテナンスが定期的に必要
・耐熱性が低い
トタン屋根の素材であるブリキは熱伝導率が高いため、耐熱性が低いことがデメリットです。
熱伝導率が高い金属は熱気や冷気の影響を受けやすいため、熱しやすく冷めやすい性質を持ちます。
トタン屋根を選ぶと、夏は太陽の熱によって室内の温度が上昇しやすくなります。夏は暑く冬は寒い盆地地域にお住まいの方、沖縄など気温が高くなりやすい地域にはあまりおすすめできません。
またエアコンが効きにくい可能性があるため、暑さ対策を考える必要があります。
・雨風の音が反響しやすい
トタン屋根は薄い金属板で振動が伝わりやすいため、音の伝導率が高く雨風の音が反響しやすいデメリットがあります。
たとえばトランペットやシンバルなどの楽器にも金属が使用されていますが、それは金属には剛性があり音の振動を伝えやすい性質を持つためです。
トタン屋根も楽器と同じで剛性があります。そのため、音の振動が伝わりやすく台風など激しい雨風でなくても部屋中に音が反響してしまいます。
トタン屋根は、赤ちゃんがいる家庭の家や音に敏感な方にはおすすめできません。
・耐久年数が短くメンテナンスが定期的に必要
トタン屋根はサビやすいこととメッキ仕上げであるため、耐久年数が短い傾向にあります。
具体的には以下のようなトラブルが起きる可能性があります。
- 亜鉛による金属メッキ仕上げをするためメッキはがれのリスクがある
- サビついた状態を放置すると穴が空き、雨漏りなどのリスクがある
- トタン屋根の固定に使用される鉄製の釘が雨風にさらされサビる
屋根は常に熱や雨風にさらされやすい部分であるため、劣化しやすい箇所です。加えてトタン屋根は、他の金属屋根のように防錆が強化されていません。他の金属屋根と比較すると経年劣化が早い傾向です。
メンテナンスのための追加費用をなるべく避けたい方、定期的にメンテナンスするのは面倒だと感じる方にはおすすめできません。
トタン屋根の種類
トタン屋根にはいくつか種類があります。それぞれの特徴を理解しましょう。
・波型トタン
波型トタンはその名のとおり形状が波打っている屋根材を使用し、縦方向に張っていきます。小さな物置き小屋に使用されることが多い傾向です。外壁や勾配のない屋根に使用できるのも、波型トタンならではの特徴です。
自力で修繕する際はホームセンターで購入できます。
苔やカビが発生するため、こまめに水とブラシで掃除すると長持ちします。留め具が緩んだり外れたりすることがあるため、こまめに点検して締め直しましょう。
使用する留め具は以下があります。
- ビス
- ステンレス製の傘釘
- ポリカーボネート製のポリカフック
- 金属製のフックボルド
- 金属製のパイプボルト
<ビス>
ビスは屋根の下地が木材や金属の際に使用します。
<傘釘>
傘釘は屋根の下地が木材でできている場合に使用します。
雨漏りの予防効果に優れており、ステンレス製であることからサビにも強いのが特徴です。
<ポリカフック>
ポリカフックは下地がアルミの場合に使用します。耐久性に優れているため、台風などで緩んだり外れたりしにくいのが特長です。
<フックボルト>
フックボルトはL状のアングルの場合に使用します。
<パイプボルト>
パイプボルトは下地にパイプが使われている場合に使用します。
・折板(せっぱん)
折板は、トタン板を折り曲げて加工した屋根材で、剛力や耐力が強化されています。長さを出せるため、工場やドームの屋根といった屋根面積が広い建物にも使用できます。
施工方法は5種類あり、そのうち主流なのは以下の3つです。
- はぜ締めタイプ
- 重ねタイプ
- 嵌合(かんごう)式タイプ
<はぜ締めタイプ>
「はぜ」とは折り曲げ部分のことです。タイトフレームに取り付けた金具を2枚の折板屋根で挟み、はぜを締めて固定します。その際ボルトは使いません。雨水が入りにくいため雨漏りのリスクを抑えられるのがメリットです。
<重ねタイプ>
重ねタイプは、タイトフレームから突き出した固定のボルトに屋根を貫通させ、上からボルトを締めて固定する手法です。台風にも強いですが、ボルトが突出していることからサビやすいデメリットがあります。
<嵌合(かんごう)式タイプ>
嵌合式タイプは、継ぎ目にキャップを取り付けてボルトが表面にでないようにする手法です。施工費用や修理費用が高めなのがデメリットです。
・瓦棒(かわらぼう)
瓦棒(かわらぼう)とは、30〜45cmの間隔で瓦棒を取り付け、それを土台にトタン板を施工する方法です。瓦棒の中に芯木を入れるパターンと入れないパターンがあります。最近は電触によるサビを防止するため、芯木を入れないパターンで施工するのがおすすめです。
【修理方法別】トタン屋根の修理にかかる費用の相場
トタン屋根を長持ちさせるためには、サビ、塗膜の剥がれ、穴空きなど劣化症状に合わせた適切なメンテナンスが必要です。
以降では、修理方法別にトタン屋根の修理費用の相場をご紹介しています。
塗装
塗装は、穴空きがなくサビや退色が見られるトタン屋根の補修方法です。見た目が綺麗になるだけでなく、塗布する塗料によっては耐久性アップも期待できます。
塗装補修修理では、サビの除去と色の塗り替えを行います。まず、高圧洗浄で汚れを落としたあとケレン作業というサビ落としを行います。次に錆止め塗装をしてカラー塗装を下塗りと上塗りで2回、場合によっては中塗りも行い3回に分けて塗装します。
サビのレベルによって費用は変動しますが、約30万円〜50万円程度が目安です。
工期は2〜4日で完了することもあれば、10日以上かかることもあります。
カバー工法
屋根カバー工法は、屋根全体がサビて塗装補修では対応できない場合に用いられる修理方法です。
既存の屋根の上に新しい屋根を被せ直す方法で修繕します。まず芯木を補強したあと野地板張りを行います。次に防水シート(ルーフィング)を張って屋根材を被せて完了です。
少し屋根の重みが増すのがデメリットですが、トタン板は軽量であるため他の金属屋根と比べて過度な心配はいりません。
費用は約80万円~150万円程度であるため、屋根の張替えと比べてコストはそれほどかかりません。
施工は3〜5日と短期で終わり、施工中も普段通りに生活できます。
屋根カバー工法では屋根の下地処理はしないため、屋根の下地の腐食が進んでいる場合は対応できません。腐食が進んでいる場合は、下地補修も行う張替えを検討する必要があります。
張替え(葺き替え)
張替え(葺き替え)は、屋根全体にサビが回っていたり、穴空きや下地の傷み具合がひどかったりする場合に行う補修方法です。トタン屋根に張替えできますが、サビに強く耐久性もあるガルバリウム鋼板に変更するのが主流です。
張替えは、まずトタンをはがしたあと野地板張りを行い、防水シート(ルーフィング)を張ってから張替えを行います。
下地補修や工程数の多さもあり、費用の目安は約110万円~200万円程度と高額です。
施工期間は10〜14日と少し長めですので、スケジュールを考慮しながら業者に相談しましょう。
部分修理
部分修理は、屋根の一部に穴や剥がれ、サビがあるといった場合に行われる補修方法です。
修理の工程は修理内容によって異なります。部分修理で対応できる修理箇所は以下の通りです。
- トタンの表面
- 雨樋
- 軒先
- 棟板金
費用の目安は約5万円〜40万円程度です。
ただし費用は修理範囲によって変動するため、50万円程度する場合もあります。
棟板金交換
棟板金交換は、棟板金がサビたり台風や強風などの自然災害で剥がれたりした場合に行う修理方法です。
棟板金とは屋根のてっぺんに取り付けているカバーをいいます。交換は、古い棟板金と貫板を除去したあと新しい貫板と棟板金を取り付けます。
工程数が少ないため工期はおよそ1〜2日で完了し、費用の目安は約10万円~20万円程度です。
棟板金の剥がれは貫板の腐食が原因であることが多いため、15〜20年に一度は新しい貫板に交換することが推奨されています。
トタン屋根でよくある質問
トタン屋根でリフォームを依頼する前には、気になる疑問を先に解決して安心したいですよね。
以下ではトタン屋根に関するよくある質問に答えていきます。
トタン屋根の寿命は?
トタン屋根の寿命は10〜20年程度ですが、メンテナンスをせずにいると寿命は約10年短くなってしまいます。
寿命の長さは使用環境や製品、メンテナンスの有無のほか、塗料によっても異なります。塗料ではグレードが高くなるほどトタン屋根の年数が延びるため、できるかぎり寿命を延ばしたいのであれば、グレードの高い塗料がおすすめです。
トタン屋根を修理するタイミングは?
トタン屋根は、10〜20年程度の寿命であることを考慮して、7~10年を目安にメンテナンスするのがおすすめです。
ただし、塩害を受けたり屋根に落ち葉が溜まりやすかったりすると腐食しやすくなります。さらにこまめなメンテナンスが必要です。
修理が必要な劣化や損傷がある場合は、見つけたタイミング修理を受けましょう。たとえば以下のような場合は速やかな修理が必要です。
- サビている
- 雨漏りしている
- 変形している
- 塩害を受けている
サビや変形、潮風による被害などの確認は、下から見上げてわかる範囲で構いません。屋根に登るのは滑落事故を起こす危険性があるため、あまりおすすめしません。
トタン屋根の補修はDIYできる?
劣化状況が軽く簡単に補修できるものであればDIYも可能です。
たとえば軽いサビであれば、サビの上からトタン屋根用のシリコン塗料を塗布してサビの進行を防げます。
ただし、屋根の上での作業はプロでも事故が発生するほど危険であるため、DIYはあまりおすすめできません。加えて腐食が進んだトタンは耐久性がなく、足を踏み込むと穴が空いて落下する恐れもあります。
さらに、専門知識やスキルが必要な作業もあり、素人が補修すると劣化を早めたり、うまく補修できず余計悪化しかねません。
屋根の修繕は専門業者に依頼するほうが安心です。
屋根材が割れる原因によっては火災保険が適用され、無料で修理できるケースがあります。しかし、DIYのために一度でも屋根に登ると、その行為で屋根が壊れたと判断され風災補償から外れることがあります。火災保険に加入している方は、簡単に補修できそうであってもDIY補修は避けましょう。
トタン屋根はメリットもデメリットも大きい
トタン屋根は、地震対策ができたり耐火性があったりといった大きなメリットがあります。
しかし、遮音性で劣っていたり定期的なメンテナンスが必要などのデメリットも存在します。
メリットとデメリットをよく比較してからリフォームをするようにしましょう。
どうしても決められない場合は、専門業者に相談しながらリフォームの話を進めるのもおすすめです。
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