2025.07.10

建設業 請負契約の完全ガイド:契約書の作成から法的リスク対策まで

建設業 請負契約の完全ガイド:契約書の作成から法的リスク対策まで

建設工事を受注し、無事に完工させるためには、適切な請負契約の締結が不可欠です。しかし、契約内容によっては、思わぬ法的トラブルに発展したり、顧客との信頼関係を損なう可能性も。本記事では、建設業における請負契約の基本から、契約書作成のポイント、法的リスクへの対策、最新の法改正情報まで、網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたも安心して建設工事を進められるはずです。

目次

1. 建設業における請負契約とは?

建設業における請負契約は、建設工事を円滑に進めるための基盤となる重要な要素です。このセクションでは、請負契約の定義と重要性、そしてその種類について解説します。

1-1. 請負契約の定義と重要性

建設業における請負契約とは、発注者(施主)が、建設業者(請負人)に対して、建物の建設や修繕などの工事を依頼し、建設業者がその完成を約束し、発注者がその対価を支払うという契約です。この契約は、工事の範囲、品質、工期、金額などを明確にし、工事を適切に進めるための取り決めとなります。

請負契約の重要性は多岐にわたります。

  • 法的リスクの軽減: 契約内容を明確にすることで、後々の法的トラブルや紛争を未然に防ぎやすくなります。
  • 顧客との信頼関係構築: 契約内容を誠実に履行することで、顧客からの信頼を得やすくなり、円滑な関係を築けます。
  • 工事の円滑な進行: 契約書に沿って工事を進めることで、工程管理や品質管理がスムーズに行われ、工事の遅延や手戻りを防ぎやすくなります。
  • コスト管理の徹底: 契約金額を明確にすることで、予算内で工事を完了させることができ、無駄なコストを削減できます。

1-2. 請負契約の種類

建設業における請負契約は、工事の種類や契約形態によって分類されます。ここでは、主な契約の種類を紹介します。

  • 工事の種類別:
    • 新築工事:新たに建物を建設する工事です。
    • 改修工事:既存の建物を修繕したり、改修したりする工事です。
    • 増築工事:既存の建物に、部屋などを付け足す工事です。
    • 解体工事:建物を解体する工事です。
  • 契約形態別:
    • 一式請負契約: 工事全体をまとめて請け負う契約です。多くの建設工事で採用されています。工事内容が明確で、詳細な見積もりが出せる場合に適しています。
    • 実費精算契約(コスト・プラス・フィー契約): 材料費、労務費などの実費に、一定の率の管理費を加えて支払う契約です。工事内容が不確定な場合や、緊急性の高い工事に適しています。発注者と請負人の間で密な連携が必要になります。
    • その他: 専門工事請負契約、デザインビルド契約など、様々な契約形態があります。それぞれの工事の特性や、発注者と請負人の関係性に合わせて、適切な契約形態を選択することが重要です。

これらの請負契約の種類を理解し、それぞれの特徴を踏まえた上で、自社の状況や工事内容に最適な契約を選択することが、建設業における成功の第一歩と言えるでしょう。

2.契約書作成のポイント

建設業における請負契約を成功させるためには、適切な契約書の作成が不可欠です。このセクションでは、契約書作成のポイントとして、必須記載事項と注意すべき点について詳しく解説します。

2-1. 必須記載事項

契約書には、後々のトラブルを回避し、円滑に工事を進めるために、必ず記載すべき事項があります。具体的には以下のものが挙げられます。

  • 工事名: どの工事に関する契約なのかを明確にするために、工事名を記載します。
  • 発注者と請負人の情報: 発注者と請負人の氏名(法人の場合は名称と代表者名)、住所、連絡先を正確に記載します。会社の登記簿謄本などを参考に、正確な情報を記載することが重要です。
  • 工事場所: 工事を行う場所を特定するために、地番や住所を正確に記載します。
  • 工事内容: 具体的な工事内容を詳細に記載します。設計図書や仕様書などを添付し、契約書の一部とすることも有効です。工事の内容を明確にすることで、後々の変更や追加工事の際に、スムーズな対応が可能になります。
  • 契約金額: 工事の対価となる金額を記載します。消費税を含める場合は、その旨を明記します。金額の支払い条件(前払い、中間払い、後払いなど)についても、詳細に記載する必要があります。
  • 工期: 工事の開始日と完成予定日を記載します。工期の遅延が発生した場合の対応(遅延損害金など)についても、あらかじめ定めておくことが重要です。
  • 瑕疵担保責任: 工事の完成後に、瑕疵(欠陥)が見つかった場合の責任について記載します。責任を負う期間や、補修の方法などを明確にしておく必要があります。
  • 契約解除に関する事項: 発注者または請負人が契約を解除できる条件を記載します。例えば、債務不履行や倒産などが該当します。契約解除の手続きや、損害賠償についても定めておく必要があります。
  • その他: その他特記事項がある場合は、契約書に記載します。例えば、追加工事の際の費用負担、危険負担、紛争解決に関する事項などです。これらの事項を明確にすることで、より円滑な工事の遂行と法的リスクの軽減につながります。

2-2. 注意すべき点

契約書を作成する際には、法的リスクを回避し、円滑な工事を進めるために、以下の点に注意する必要があります。

  • 専門家による確認: 契約書を作成する際は、弁護士や行政書士など専門家のチェックを受けることが重要です。専門家の視点で、法的リスクや契約内容の適正性を確認できます。
  • 詳細な打ち合わせ: 契約書を作成する前に、発注者と請負人の間で詳細な打ち合わせを行うことが重要です。工事内容、金額、工期などについて、認識の相違がないかを確認し、合意形成を図ります。打ち合わせの内容は、議事録として残しておくことが望ましいです。
  • 書面の保管: 契約書は、発注者と請負人の両者が保管します。工事に関する重要な書類(設計図書、仕様書、見積書など)も、一緒に保管しておきましょう。これらの書面は、万が一のトラブル発生時の証拠となります。
  • 変更時の対応: 契約内容に変更が生じた場合は、必ず書面で変更契約書を作成し、両者が署名・押印します。口頭での合意だけでは、後々のトラブルにつながる可能性があります。
  • 最新の法規制への対応: 建設業を取り巻く法規制は頻繁に改正されます。最新の法規制に対応した契約書を作成することが重要です。定期的に契約書を見直し、必要に応じて修正を行いましょう。

これらのポイントを踏まえて契約書を作成することで、法的リスクを軽減し、顧客との信頼関係を構築することができるでしょう。

3. 建設業法と下請法の基礎知識

建設業を営む上で、建設業法と下請法の理解は不可欠です。これらの法律は、建設工事の適正な運営を確保し、関係者の権利を守るために存在します。このセクションでは、建設業法と下請法の概要、そしてそれぞれの重要性について解説します。

3-1. 建設業法の概要

建設業法は、建設工事の請負契約に関するルールを定めた法律です。建設業者の許可制度、技術者の配置、建設工事の適正な施工、建設業者の義務などを定めています。この法律の目的は、建設工事の質の確保、発注者の保護、建設業の健全な発展を図ることです。

建設業法は、建設業者が守るべき基本的なルールを定めており、違反した場合は、営業停止や許可の取消しなどの処分を受ける可能性があります。主な内容は以下の通りです。

  • 建設業許可: 建設業を営むためには、原則として建設業の許可を受ける必要があります。許可には、国土交通大臣または都道府県知事によるものがあり、工事の種類や規模によって異なります。許可を受けるためには、一定の要件(経営体制、技術者、誠実性など)を満たす必要があります。
  • 技術者の配置: 建設工事には、一定の資格を持つ技術者を配置する必要があります。技術者は、工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理などを行い、工事の安全と品質を確保する役割を担います。
  • 適正な施工: 建設工事は、法令や設計図書に従って、適正に施工されなければなりません。手抜き工事や不適切な施工は、重大な事故やトラブルを引き起こす可能性があります。建設業者は、工事の品質確保のために、適切な管理体制を構築する必要があります。
  • 建設業者の義務: 建設業者は、発注者に対して誠実に契約を履行し、工事の品質を確保する義務があります。また、下請業者に対しても、適正な取引を行い、労働環境を整備する義務があります。

建設業者にとって建設業法を遵守することは、顧客からの信頼を得て、事業を継続的に発展させるために不可欠です。

3-2. 下請法の重要性

下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、親事業者と下請事業者の間の公正な取引を確保するための法律です。建設業においては、元請業者(親事業者)と下請業者の関係が一般的であるため、下請法の理解と遵守が重要になります。

下請法は、親事業者に対して、下請代金の支払遅延、不当な減額、不当な返品、買いたたきなどの行為を禁止しています。また、下請代金の支払期日、支払方法、下請事業者の権利などについても規定しています。

下請法の主な内容は以下の通りです。

  • 書面の交付義務: 親事業者は、下請事業者に対して、発注内容や下請代金などを記載した書面を交付する必要があります。これにより、取引内容を明確にし、トラブルを未然に防ぐことができます。
  • 支払遅延の禁止: 親事業者は、下請代金の支払いを遅延してはなりません。支払期日を定め、遅延した場合は、遅延損害金を支払う必要があります。
  • 不当な減額の禁止: 親事業者は、下請代金を不当に減額してはなりません。下請事業者の責任によらない理由で減額することは違法です。
  • 不当な返品の禁止: 親事業者は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、納品されたものを返品してはなりません。
  • 買いたたきの禁止: 親事業者は、下請事業者に不当に低い価格で発注してはなりません。適正な価格で発注することが求められます。

下請法を遵守することは、下請事業者の保護だけでなく、建設業界全体の健全な発展にもつながります。親事業者は、下請法を遵守し、下請事業者との公正な取引を心がける必要があります。

建設業法と下請法の両方を遵守することは、建設業者が法的リスクを回避し、公正な取引を行い、事業を健全に運営するために不可欠です。これらの法律に関する知識を深め、日々の業務に活かしましょう。

4. 契約に関する法的リスクと対策

建設業における請負契約では、様々な法的リスクが存在するため、それらを適切に理解し、対策を講じることが重要です。このセクションでは、特に注意すべき法的リスクである瑕疵担保責任と損害賠償について解説し、具体的な対策を提示します。

4-1. 瑕疵担保責任

瑕疵担保責任とは、工事の完成後に、隠れた瑕疵(欠陥)が見つかった場合に、請負人が負う責任のことです。民法では、工事の目的物に瑕疵がある場合、発注者は請負人に対して、瑕疵の修補請求、損害賠償請求、契約解除などを求めることができます。建設工事においては、建物の構造部分など、完成後すぐには発見できない瑕疵も存在するため、瑕疵担保責任は特に重要なリスクとなります。

瑕疵担保責任に関する主なポイントは以下の通りです。

  • 責任期間: 民法上、瑕疵担保責任の期間は瑕疵を発見してから1年以内と定められています。しかし、建設工事においては、建物の構造部分など、長期間にわたって瑕疵が顕在化する場合があるため、より長い期間の責任を負うことがあります。品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、 住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分は、10年間の瑕疵担保責任が義務付けられています
  • 責任の内容: 瑕疵が見つかった場合、請負人は、瑕疵の修補(補修工事)、瑕疵によって生じた損害の賠償、契約の解除などを行う必要があります。修補にかかる費用や瑕疵が原因で生じた損害(建物の使用不能による損失など)は、請負人が負担することになります。
  • 免責事項: 契約書において、瑕疵担保責任を負わない旨を定めることも可能です。ただし、 故意または重大な過失による瑕疵については、免責することはできません。また、瑕疵の種類や程度によっては、免責が認められない場合もあります。

瑕疵担保責任に関するリスクを軽減するための対策としては、以下のものが挙げられます。

  • 契約書での明確化: 瑕疵担保責任の範囲、期間、免責事項などを、契約書で明確に定めておくことが重要です。特に、責任期間については、工事内容や建物の種類に応じて、適切な期間を設定する必要があります。
  • 工事中の検査の徹底: 工事の各段階で、入念な検査を行い、瑕疵の発生を未然に防ぐことが重要です。検査記録を残し、証拠として保管しておくことも有効です。
  • 保険への加入: 瑕疵担保責任保険に加入することで、万が一瑕疵が発生した場合の経済的負担を軽減できます。保険の内容や適用範囲を確認し、自社のリスクに合わせて加入を検討しましょう。
  • アフターサービスの充実: 瑕疵が発生した場合に、迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。顧客からのクレーム対応窓口を設置したり、定期的な点検を実施したりするなどの対策が考えられます。
瑕疵担保と書かれたノートとマーカー

4-2. 損害賠償

損害賠償とは、請負人の債務不履行(契約違反)や不法行為によって、発注者に損害が生じた場合に、請負人がその損害を賠償する責任のことです。建設工事においては、工事の遅延、手抜き工事、工事中の事故などによって、損害賠償が発生する可能性があります。

損害賠償に関する主なポイントは以下の通りです。

  • 損害賠償の範囲: 損害賠償の範囲は、債務不履行または不法行為によって生じたすべての損害(直接損害、間接損害)を含みます。工事の遅延による利益の損失、事故による物的損害、精神的苦痛に対する慰謝料なども、損害賠償の対象となる可能性があります。
  • 損害賠償額の算定: 損害賠償額は、具体的な損害の内容や程度に応じて算定されます。工事の遅延による損害については、遅延日数に応じた損害賠償金(遅延損害金)が定められることが一般的です。損害賠償額を算定する際には、契約書の内容や、関連する法令などを考慮する必要があります。
  • 免責事項: 契約書において、損害賠償責任を負わない旨を定めることも可能です。また、損害賠償の範囲を限定する(例:間接損害は賠償しないなど)ことも可能です。ただし、 故意または重大な過失による債務不履行や不法行為については、免責することはできません。

損害賠償に関するリスクを軽減するための対策としては、以下のものが挙げられます。

  • 契約書での明確化: 損害賠償の範囲、免責事項、損害賠償額の算定方法などを、契約書で明確に定めておくことが重要です。特に、遅延損害金については、工事の遅延が発生した場合に備えて、あらかじめ具体的な金額または算定方法を定めておく必要があります。
  • 工程管理の徹底: 工事の遅延を防ぐために、綿密な工程管理を行い、進捗状況を定期的に確認することが重要です。万が一、遅延が発生しそうな場合は、速やかに発注者に報告し、対応策を協議する必要があります。
  • 安全管理の徹底: 工事中の事故を防ぐために、安全管理体制を整備し、安全対策を徹底することが重要です。労働安全衛生法などの関連法令を遵守し、安全教育の実施、安全設備の設置などを行う必要があります。
  • 保険への加入: 建設工事保険や賠償責任保険に加入することで、万が一損害賠償が発生した場合に経済的負担を軽減できます。保険の内容や適用範囲を確認し、自社のリスクに合わせて加入を検討しましょう。

5. 最新の法改正情報

建設業を取り巻く法規制は、常に変化しています。最新の法改正情報を把握し、自社の業務に適切に対応することは、法的リスクを回避し、コンプライアンスを遵守するために不可欠です。このセクションでは、建設業に関連する最新の法改正情報について解説します。

最新の法改正情報の取得方法

最新の法改正情報を得るためには、以下の方法があります。

  • 国土交通省のウェブサイト: 国土交通省のウェブサイトでは、建設業法や関連法令の改正情報が公開されています。定期的に確認し、最新情報を把握しましょう。
  • 建設業関連の専門メディア: 建設専門の雑誌やウェブサイトでも、法改正に関する情報が掲載されています。これらのメディアを通じて、専門的な視点から最新情報を得ることができます。
  • セミナーや講習会への参加: 建設業に関するセミナーや講習会に参加することで、専門家から直接、法改正に関する解説を聞くことができます。質疑応答を通じて、疑問点を解消することも可能です。
  • 弁護士や行政書士などの専門家への相談: 建設業に詳しい弁護士や行政書士に相談することで、自社の状況に合わせた法改正への対応策についてアドバイスを受けることができます。

近年の主な法改正の動向

近年、建設業に関連する法改正は、以下の分野で多く見られます。

  • 働き方改革関連法: 建設業においても、労働時間の上限規制、年次有給休暇の取得義務化など、働き方改革関連法が適用されています。これにより、労働時間管理の徹底、長時間労働の是正、労働環境の改善が求められています。
  • 建設キャリアアップシステム(CCUS): 建設技能者の技能や経験を評価し、キャリアアップを支援するためのシステムです。CCUSの活用により、技能者の処遇改善や、人材不足の解消が期待されています。
  • インボイス制度: 2023年10月1日から、インボイス制度が導入されました。建設業においても、インボイスの発行や保存、消費税の計算など、対応が必要となります。
  • 下請法の改正: 下請法の改正により、親事業者の義務が強化され、下請事業者の保護が図られています。建設業者は、下請法を遵守し、公正な取引を行う必要があります。

法改正への対応

法改正への対応は、以下の手順で行うことが重要です。

  1. 情報収集: 国土交通省のウェブサイトや専門メディアなどを通じて、最新の法改正情報を収集します。
  2. 内容の理解: 法改正の内容を理解し、自社の業務にどのような影響があるかを分析します。
  3. 対応策の検討: 法改正に対応するための具体的な対策を検討します。例えば、就業規則の変更、契約書の修正、業務フローの見直しなどを行います。
  4. 社内への周知: 法改正の内容と対応策を、社内の関係者に周知徹底します。必要に応じて、研修などを実施することも有効です。
  5. 継続的な見直し: 法改正への対応は、一度行えば終わりではありません。定期的に見直しを行い、最新の状況に合わせて対応策を改善していくことが重要です。

法改正情報は、建設業者の業務に大きな影響を与える可能性があります。常に最新の情報を把握し、適切に対応することで、法的リスクを回避し、事業の安定的な運営につなげましょう。

6. 契約トラブル事例と解決策

建設業における請負契約では、実際に様々なトラブルが発生しています。本セクションでは、契約に関する具体的なトラブル事例と、その解決策を紹介します。これらの事例を通して、法的リスクを理解し、未然にトラブルを防ぐための対策を学びましょう。

事例1:追加工事費用の未払い

A社は住宅の新築工事を請け負いました。工事中に、発注者から追加工事の依頼があり、A社はこれを受け入れました。しかし、工事完了後、発注者は追加工事の費用を支払わず、未払いが発生しました。

原因:

  • 追加工事の内容や費用について、書面による明確な合意がなかった。
  • 口頭でのやり取りだけで、証拠となるものがなかった。

結果:

  • 建設会社は、追加工事費用を回収できず、損失を被った。
  • 発注者との関係が悪化し、今後の取引に支障が生じた。

解決策:

  • 追加工事を行う前に、必ず書面(変更契約書など)を作成し、工事内容、費用、工期などを明確に合意する。
  • 追加工事の費用については、詳細な見積もりを作成し、発注者の承認を得る。
  • 工事の進捗状況や費用について、定期的に発注者と打ち合わせを行い、記録を残す。

事例2:瑕疵(かし)による損害賠償請求

B社はマンションのリフォーム工事を請け負いました。工事完了後、入居者から雨漏りが発生しているとクレームがあり、調査した結果、施工不良による瑕疵が原因であることが判明しました。入居者は、建設会社に対して、損害賠償を請求しました。

原因:

  • 施工時の検査が不十分で、瑕疵を発見できなかった。
  • 瑕疵に対する補修工事が適切に行われなかった。

結果:

  • 建設会社は、損害賠償費用を支払うことになった。
  • 建物の修補工事を行い、追加の費用と手間が発生した。
  • 会社の信用が低下し、今後の受注に影響が出た。

解決策:

  • 工事の各段階で入念な検査を行い、瑕疵の発生を未然に防ぐ。
  • 瑕疵が発生した場合は、速やかに適切な修補工事を行う。
  • 瑕疵担保責任保険に加入し、万が一の事態に備える。
  • アフターサービス体制を整備し、顧客からのクレームに迅速に対応する。

これらの事例から、契約トラブルを回避するためには、事前準備と問題発生時の適切な対応が不可欠であることがわかります。契約書の作成、工事中の検査、そして保険への加入など、様々な対策を講じることで、法的リスクを最小限に抑え、円滑な事業運営を目指しましょう。

7. 適切な契約管理の方法

建設業における請負契約を適切に管理することは、法的リスクを軽減し、工事を円滑に進めるために不可欠です。このセクションでは、適切な契約管理の方法について解説します。

契約書の保管と管理

契約書は工事に関する重要な証拠となります。紛失や劣化を防ぐために、適切な方法で保管・管理することが重要です。

  • 保管場所の選定: 契約書は安全な場所に保管しましょう。電子データとして保存する場合は、バックアップを定期的に行いましょう。
  • 書類の整理: 契約書だけでなく、設計図書、仕様書、見積書、変更契約書など、工事に関する書類を整理し、関連付けて保管しましょう。
  • 管理体制の構築: 契約書の管理担当者を決め、書類の出し入れや、廃棄のルールを明確にしましょう。

契約内容の進捗管理

契約内容の進捗状況を定期的に確認し、問題点があれば、速やかに対応することが重要です。

  • 工程管理: 工事の進捗状況を、工程表などを用いて定期的に確認しましょう。遅延が発生している場合は、その原因を分析し、対策を講じましょう。
  • 品質管理: 工事の品質を確保するために、検査や試験を適切に行い、記録を残しましょう。
  • 費用管理: 契約金額と実際の費用を比較し、予算内で工事が進んでいるかを確認しましょう。

変更・追加工事への対応

工事中に、契約内容に変更が生じることはよくあります。変更や追加工事については、必ず書面で合意し、適切な対応を行いましょう。

  • 変更契約書の作成: 変更内容、費用、工期などを明記した変更契約書を作成し、発注者と請負人の両者が署名・押印しましょう。
  • 追加費用の請求: 追加工事が発生した場合は、詳細な見積もりを作成し、追加費用を発注者に請求しましょう。
  • 記録の保管: 変更契約書や見積書など、変更・追加工事に関する書類を適切に保管しましょう。

トラブル発生時の対応

万が一、契約に関するトラブルが発生した場合は、冷静に状況を把握し、適切な対応をとることが重要です。

  • 事実確認: トラブルの原因や状況を正確に把握するために、関係者への聞き取り調査や、証拠となる書類の確認を行いましょう。
  • 記録の作成: トラブルの内容や、対応状況を記録しておきましょう。
  • 専門家への相談: 必要に応じて、弁護士や行政書士などの専門家に相談しましょう。
  • 和解交渉: 相手方との間で、和解交渉を行うことも検討しましょう。

契約管理ツールの活用

近年では、契約管理を効率化するためのITツールが登場しています。これらのツールを活用することで、契約書の作成、保管、進捗管理などを効率的に行うことができます。

  • 契約管理システムの導入: 契約書の作成から、承認、保管までを一元管理できるシステムを導入することで、業務効率を向上させることができます。
  • クラウドサービスの活用: クラウド上で契約書を管理することで、場所を選ばずにアクセスでき、情報共有も容易になります。
  • 情報共有ツールの活用: プロジェクト管理ツールなど、情報共有を円滑にするツールを活用することで、関係者間のコミュニケーションをスムーズにし、トラブルを未然に防ぐことができます。

適切な契約管理は、建設業者と顧客の信頼関係を築き、事業を成功させるための重要な要素です。契約書の保管、進捗管理、変更への対応、トラブル発生時の対応など、適切な契約管理を行い、安定的な事業運営を目指しましょう。

まとめ

建設業における請負契約は、法的リスクを回避し、円滑な事業運営を実現するための重要な基盤です。本記事では、請負契約の定義から、契約書作成のポイント、法規制、トラブル事例、そして適切な契約管理の方法まで、幅広く解説しました。

適切な契約を締結し、最新の法改正に対応することで、建設業者は顧客との信頼関係を築き、安定した事業運営を行うことができます。本記事が、皆様の事業の一助となれば幸いです。

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