2024.02.27

コンクリートのひび割れの原因|放置した場合の症状、補修方法は?

コンクリートのひび割れの原因|放置した場合の症状、補修方法は?

コンクリートは、耐久性・耐火性に優れた材料で、住宅の基礎部分や壁など多くの箇所に使用されています。

そんなコンクリートにひびが入っているのを見つけると「このままにしておいて大丈夫なの?」と不安に感じてしまいますよね。

コンクリートは本質的にひび割れが生じやすい材料です。これはコンクリートが圧縮される力には強い反面、引張力には弱く、変形能力が低いという性質が理由です。コンクリートに発生する引張力に耐えられず、ひび割れが起きてしまいます。

本記事では、コンクリートがひび割れする原因や建物への影響を解説します。加えて、ひび割れに対する補修方法を紹介するので、自宅のひび割れの状況を確認し、建物の寿命や見た目を維持するために適切な処置を施しましょう。

目次

コンクリートがひび割れする主な原因

コンクリートが何らかの要因によって引っ張られた際に、引っ張られた力(引張力)と釣り合うよう、引張応力という力がコンクリート内に働きます。

引張応力によって生じたひずみがコンクリートの持つ変形能力を超えると、コンクリートが負荷に耐えられなくなります。これがひび割れの原理です。

具体的にどのような要因がコンクリートのひび割れに影響するのか、以下より解説します。

環境の変化によるもの

コンクリートのひび割れは、以下3つの環境の変化によって発生します。

  • 乾燥収縮によるひび割れ
  • 温度変化によるひび割れ
  • 二酸化炭素が引き起こすコンクリートの中性化によるひび割れ

乾燥収縮によりひび割れする理由は、コンクリート内の水分が乾燥して蒸発することです。
水分の蒸発によって体積が減少し、収縮する際に引張力が発生します。引張力に弱いコンクリートは、引張応力による負荷に耐えられずひび割れを起こします。

また、外気の温度変化がコンクリートのひび割れを起こす場合があります。
コンクリートは温度が上がると体積が膨張し、下がると収縮する性質を持っています。外気に触れているコンクリートは、外気温の変化によって膨張と収縮を繰り返している状態です。
温度変化による体積の膨張・収縮によってコンクリートに負荷がかかり、常にひび割れが発生する危険が生じます。特に寒暖差の大きい地域は注意が必要です。
そのほか、排ガスや酸性雨、二酸化炭素がひび割れに影響します。

コンクリートはアルカリ性の素材です。アルカリ性の性質により、通常はコンクリート内の鉄筋周りに不動態被膜が形成され、錆びつきにくくなっています。
排ガスや酸性雨、二酸化炭素は、コンクリートが持つアルカリ性の性質を中性に変えてしまう働きがあります。
排ガスや酸性雨、二酸化炭素にさらされたコンクリートは中性の状態になり、形成していた不動態皮膜を破壊して、鉄筋の腐食や錆を引き起こします。錆の分だけ体積が膨張してしまい、ひび割れを生じさせます。

経年劣化によるもの

コンクリートは、小さな重みが繰り返し加わることで性能が落ち、ひび割れを引き起こします。

たとえば車の往来や積雪などです。疲労損傷や疲労破壊と呼ばれます。

また、コンクリートの劣化現象の一つに「アルカリ骨材反応」があります。アルカリ骨材反応とは、コンクリートに含まれるアルカリ性の水溶液が砂や砂利などの特定の骨材と化学反応を起こし、アルカリシリカゲルを発生させる現象です。

アルカリシリカゲルは、水を取り込む性質があるため、コンクリートに含まれる水分を吸収して膨張し、ひび割れを引き起こす場合があります。

施工不良によるもの

建築時の施工不良は、コンクリートにひび割れを生じさせる要因のひとつです。

たとえば、コールドジョイントが挙げられます。コールドジョイントとは、はじめに打ち込んだコンクリートと後に打ち込んだコンクリートの繋ぎ目が、うまく一体化していない状態です。打重ね時間が適切でない場合に発生します。不連続な継ぎ目がコンクリートの強度を低下させ、ひび割れを引き起こしかねません。

他にも、施工不良によるひび割れの要因は様々です。以下にいくつか例を挙げます。

  • コンクリートが硬化する過程で強い振動を与えてしまった
  • コンクリートを施工する型枠や支保工の強度が足りなかった
  • 型枠を外すタイミングが不適切で、型枠にコンクリートが付着し引っ張られてしまった
  • 材料に不純物が含まれており、硬化後のコンクリートの性質に影響が出てしまった

不同沈下や地盤の歪みによるもの

不同沈下や地盤の歪みにより、コンクリートにかかる荷重が均一でなくなることで、ひび割れが発生します。

不同沈下(不等沈下)とは、建物の重みで地盤が均等ではなく偏って沈下する現象です。不同沈下により建物が傾いてしまうため、コンクリートにかかる重みが傾いた箇所に集中してしまい、ひび割れが発生します。

不同沈下が発生する原因は、以下の通りです。

  • 土地の地盤が弱い
  • 平家の部分と二階の部分があるような、荷重に偏りのある造りの住宅が建っている
  • 調査では探知できなかった腐植土層があった

不同沈下の偏りは、一度発生すると対処が困難です。地震によって建物が崩壊しかねないため、早期に手をうつ必要があります。

窓が開けにくかったり、サッシの鍵がかかりにくくなったりしたら、不同沈下を疑い専門業者に相談しましょう。

コンクリートのひび割れを放置するとどうなる?

コンクリートのひび割れは軽微なものだからといって放置してはいけません。ひび割れを放置すると症状がさらに悪化します。ひび割れを発見したら、手遅れになる前にすぐに補修しましょう。

以下より、ひび割れを放置した結果起きてしまうデメリットや、補修を依頼した方がいい目安について解説します。

コンクリートのひび割れを放置し続けた場合の主な症状

コンクリートのひび割れを放置すると、以下の症状が発生しやすくなります。

  • コンクリートの強度が低下する
  • コンクリートの見た目が悪化する
  • コンクリートに雨染みが発生する

それぞれ解説します。

・強度の低下

コンクリートの基礎や柱には、内部に鉄筋を使用する場合がほとんどです。ひび割れを放置し、鉄筋部分までひび割れが広がると、ひびから侵入した水分によって錆が発生して鉄筋の腐食を進行させてしまいます。その結果、コンクリートの耐久性が低下し建物の強度に影響を及ぼしかねません。

建物の基礎部分で発生したひび割れを放置すると、建物が傾いたり地盤沈下を引き起こす等、危険な状態を引き起こすため注意が必要です。

・見た目の悪化

ひび割れを放置すると、コンクリートは荷重を受け続けるためひびがどんどん広がります。ひび割れが広がってしまうと見た目が悪くなり、コンクリート特有のきめ細かく美しい仕上がりが損なわれます。

また、周囲から家の管理ができていないという悪いイメージを持たれかねません。こだわって建てた家だからこそ、ひび割れを放置せず美しい見た目を維持しましょう。

・雨染みの発生

ひび割れを放置すると、ひび割れからコンクリートの内部に雨水が侵入します。雨水の影響でコンクリートや建材の劣化・腐食が進み、建物の耐久性に影響を及ぼしかねません。

また、雨水の侵入は室内への雨漏りを引き起こします。雨漏りが起きると、壁や天井を汚してしまうだけでなく、カビの発生でアレルギー症状が悪化するなど、身体に悪影響を及ぼします。

さらに湿気が多くジメジメしたコンクリート下は、シロアリが生息するのに適した環境です。雨水によりコンクリート内部が湿気で満たされると、わずかなひびから侵入したシロアリが住みつきます。シロアリの影響で住宅の寿命が短くなりかねないため注意が必要です。

コンクリートのひび割れで、工事業者を依頼したほうが良い目安

軽微なひび割れであれば、DIYで応急処置が可能です。しかし、ひびの状態次第ではすぐに業者に依頼すべき場合があります。

業者へ依頼すべきかどうか判断に迷った際は、以下3つのポイントをチェックしてください。

  • ひび割れが一定のサイズ以上か
  • ひび割れが一箇所に集中していないか
  • 水平方向のひび割れでないか

幅が0.3mm以上、もしくは深さが4mm以上のひび割れを構造クラック(貫通クラック)と呼びます。構造クラックの状態は、雨水や空気中の水分が、コンクリート内部の鉄筋まで浸透している危険性があり、放置するとコンクリート内部から劣化が進んでしまいます。コンクリートの耐久性に影響するため、早急に業者へ修理を依頼しましょう。

ひび割れ幅は、専門業者を呼ばずに「クラックスケール」という道具を使用して自身で測定できます。クラックスケールは、ホームセンターにて数百円ほどで購入可能です。
一方、深さはひび割れがまっすぐ発生しないため、自分たちで正確に測定するのは困難です。ピアノ線や針金でおおよその深さはわかるものの、建物の寿命・強度に関わるため専門業者に依頼して正確に測定してもらってください。

また1m内に3箇所以上、集中してひび割れが発生している場合は、構造クラックと同様に業者への依頼が必要です。ひび割れが集中している箇所は荷重が集中してしまっているため、不同沈下を併発している可能性があります。
0.3mm未満のヘアークラックと呼ばれる危険性が低いひび割れを軽視せず、一箇所に集中して発生していないか確認してください。

さらに、通常は縦方向に発生するひび割れが、水平方向に発生する場合があります。水平方向や斜めに伸びるひび割れは、大きな力がコンクリートに生じることでできたひび割れです。
建物の構造自体の問題が発生している可能性があり、そのままにしておくと建物が倒壊してしまいかねません。水平方向に発生したひび割れを見つけた際には、迷わず業者に相談してください。

コンクリートのひび割れの補修・予防方法

コンクリートの補修方法にはいくつかの種類があり、ひび割れの状態によって適切な方法が異なります。

以下より、4つの補修方法について解説します。家のひび割れにどの補修方法を選ぶべきか、費用と合わせて検討しましょう。

また、ひび割れが発生しないようにするには予防が重要です。リフォームするコンクリート部分にひび割れが発生しないよう、補修方法とあわせて予防策についても解説します。

ひび割れの補修方法

コンクリートのひび割れを補修する代表的な方法が、以下の4つです。

  • シール工法
  • Uカット(Vカット)シール材充填工法
  • ビックス工法(低圧注入工法)
  • アラミド繊維シート貼り付け工法

それぞれの補修方法や費用相場、工数・工期について解説します。

・シール工法

シール工法とは、ひび割れでできた隙間にシール剤(シーリング)を充填する補修方法です。

充填するシーリング材は、ひび割れの内部まで届きません。あくまでもコンクリート表面の隙間を埋める補修です。

大きなひび割れには不向きな方法で、0.3mm未満の軽微なひび割れに使用されます。

費用の相場は約300円/m程度です。表面をシーリング材で埋めるだけなので工数も短く、ほとんどの場合1日で完了します。

・Uカット(Vカット)シール材充填工法

Uカット(Vカット)シール材充填工法は、ひび割れの箇所をUまたはVカットし、カットした箇所に防水性能のあるシーリング材(エポキシ樹脂)を充填する補修方法です。シーリング材を充填した後、周囲との段差をなくすためにモルタルなどを塗布して表面を整えます。

ひび割れ箇所をカットするため、内部にまでしっかりシーリング材を充填できるのが特徴です。弾性の高いシーリング材が建物の動きに順応するため、ひび割れの再発を防げるメリットがあります。

デメリットは、ひび割れ箇所をカットして補修するため補修箇所が目立ってしまう点です。補修箇所の仕上がりは、作業員の技術力によって左右されます。

またディスクグラインダーという専用工具を使用してカットする際に、騒音や粉塵が発生します。周辺環境によっては施工できない場合があり、別の工法を検討しなければいけません。Uカット(Vカット)シール材充填工法を実施する際には、近隣の方への挨拶は怠らないようにしましょう。

Uカット(Vカット)シール材充填工法は、1mm以上の幅が広いひび割れに向いています。

費用は5,000円〜6,000円/m程度かかります。シール工法と比べて手間と時間はかかりますが、それでも工期は1〜2日程度です。

・ビックス工法(低圧注入工法)

ビックス工法(低圧注入工法)は、ひび割れ箇所にゴム製の特殊な注入器具を設置し、ゴムの圧力を利用して補修剤(エポキシ樹脂)を加圧注入する補修方法です。

低速・低圧で時間をかけて注入するため、奥深いひび割れに対して補修材が隅々まで確実に行き渡ります。そのため水分の侵入をしっかり防止でき、コンクリートの防水性向上に効果的です。
さらに、注入した樹脂が硬化して補強効果を発揮するため耐久性が上がります。

ビックス工法(低圧注入工法)は、幅0.1mm以下の小さなひび割れに対応可能です。また鉄筋まで進行した深いひびに効果を発揮します。

費用相場は、10000円〜20000円/m程度で、シール工法やUカット(Vカット)シール材充填工法と比べて高額な傾向です。

工期は2〜3日程度です。

・アラミド繊維シート貼り付け工法

アラミド繊維シート貼り付け工法は、高い接着力を持つエポキシ樹脂でアラミド繊維シートをひび割れ箇所に貼り付ける補修方法です。

アラミド繊維シートは、鋼材よりも高い引張強度を持つアラミド繊維をシート状にした素材です。タイヤや光ファイバー、防弾チョッキに使用されており、引張強度が弱いコンクリートの弱点を補ってくれます。

耐震性と耐久性の向上が期待でき、高速道路や公共工事に使用されている補修方法です。重機の必要がなく施工は比較的簡単に完了します。

アラミド繊維シート貼り付け工法は、建物の基礎部分のような構造体の補強に向いています。

費用相場はおよそ20,000円〜30,000円/mで、軽微なひび割れの補修方法としては費用が高額になりがちです。

工期は1〜3日です。

ひび割れの予防方法

コンクリートのひび割れの予防方法は、いくつかあります。

まずは収縮低減剤や膨張剤の使用です。乾燥収縮によるひび割れを防止する効果があります。

また、目地を入れて収縮を軽減させる方法があります。目地とは、コンクリートが割れないように入れるスリットのことです。コンクリートの駐車場では、砂利や芝、レンガを目地として使用している場合が多く見られます。

そのほか、養生して急激な温度変化を防止したり、コーティングをして耐久性や防水性を高めたりすることで、ひび割れを防止できます。

不同沈下によるひび割れは、そもそもそのような歪みが起きないよう、専門業者に地盤調査を徹底的に実施してもらって防止しましょう。

コンクリートのひび割れは、どんなに事前に準備しても完全に予防するのは困難です。ひび割れを軽減するために、定期的なメンテナンスを怠らないようにしてください。

コンクリートのひび割れは放置せずに、すぐに業者に相談しよう

コンクリートのひび割れは、環境の変化や経年劣化、施工不良など、さまざまな要因で発生します。

ひび割れを放置し続けると、コンクリートが荷重を受け続けることになるため、ひび割れが悪化し内部の鉄筋にまで影響を及ぼすことになりかねません。

建物の耐久性に大きく影響してしまうため、ひび割れを発見した際には早めに補修をするのがおすすめです。

業者をお探しの方は、工事やリフォームを無料で一括見積ができる「ミツマド」がおすすめです。

コンクリートのひび割れに詳しい専門スタッフが、ご要望に合う業者を複数紹介してくれるのでスムーズに施工を進められます。

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