屋根のカバー工法とは?葺き替えとの違い
屋根のリフォームには、カバー工法の他にも吹き替えによるリフォーム方法があります。
それぞれのリフォーム方法を理解していなければ、どちらが適した方法か判断できません。
以下より、カバー工法の基礎知識と、吹き替えとの違いを解説します。カバー工法を検討する目安についても解説するので、自宅の屋根がリフォームのタイミングかどうかも合わせて確認しましょう。
屋根のカバー工法とは
屋根カバー工法とは、既存の屋根の上に新しい屋根を被せる工事方法です。「重ね葺き」とも呼ばれます。屋根材を撤去する必要がないため短期間で工事が完了します。
一般的には、スレートやトタン、ガリバリウム鋼鉄が使用されている屋根に施せる工事方法です。
既存の屋根の上にルーフィングと呼ばれる防水紙を貼り、その上から軽い金属の屋根を張ります。屋根材が二重になるため、防音性が高まります。
既存の屋根に新たな屋根を重ねることや、重ねる屋根材の分屋根が重くなるといった特徴から、波形でもともと重い素材である瓦の屋根にはカバー工法は向いていません。
屋根のカバー工法と葺き替えの違い
カバー工法と葺き替えの大きな違いは、既存の屋根を撤去するか否かです。
葺き替えでは、既存の屋根を解体・撤去し、新しい屋根に交換します。野地板(コンパネ)や防水紙など、屋根全体の下地補修も一緒に行うのが特徴です。
葺き替えは屋根カバー工法に比べて、次のメンテナンスまでの期間が長くなります。ただしその分費用は高くなるので、注意しましょう。
下地が傷んでいる、一度屋根カバー工法を施工している方は葺き替え工事を検討してください。
以下にカバー工法が向いているケースと葺き替えが向いているケースをまとめました。自宅の屋根リフォームに、どちらが適しているか確認しましょう。
【カバー工法が向いているケース】
- 費用を抑えたい
- 防音性・防水性を上げたい
- 短い工期でリフォームをしたい
【カバー工法が向いているケース】
- 定期的なメンテナンスを減らしたい
- 下地まで傷んでいる
- 外観をイメージチェンジしたい
- 瓦屋根を利用している
屋根のカバー工法を検討する時期の目安
一般的には築10〜20年がカバー工法を検討する目安です。例えばスレート屋根であればひび割れや反り、金属屋根であれば錆びや穴あきなどの症状が生じやすくなります。
ただし、屋根のカバー工法を検討する時期の目安は屋根の劣化状況によって異なります。
海岸沿いや高台など周りに建物がなく、強風の影響を受けやすい地域は築後10年未満でも注意が必要です。
築後10年未満の場合は、早めに屋根の不具合を発見できれば塗装など部分的な補修で済むケースが多くあります。症状がひどくなる前に早めに職人さんに相談するのがポイントです。
また、築後40年以上を経過した屋根の場合、カバー工法は向いていません。屋根の下地まで劣化が進行している可能性が高く、旧耐震基準で建築されているため、屋根カバー工法による重さの増加に耐えられない可能性があるからです。
築後40年以上を経過した屋根のリフォームには、葺き替えを選択してください。
カバー工法のメリットとデメリット
カバー工法は葺き替え工事に比べてリフォーム費用を抑えられたり、工期が短かったりと多くのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
デメリットについてもしっかり理解し、満足がいく屋根のリフォーム工事を行いましょう。
カバー工法のメリット
カバー工法のメリットには、以下の6つがあります。
- 塗装による補修より屋根が長持ちする
- 廃材が少ない
- 葺き替えに比べてコストが抑えられる
- 工期が短い
- 住み替えをせずに工事が可能な場合もある
- 二重屋根になるため、断熱性や遮音性の向上が期待できる
カバー工法は塗装による補修に比べて屋根が長持ちします。塗装の耐用年数が5年~20年に対して、カバー工法の耐用年数は20~40年です。補修の回数が少なくて済むため、長期的に見てコストパフォーマンスを求める方におすすめです。
また、カバー工法は既存の屋根の撤去作業がありません。葺き替え工事の約半分の工期で完了し、廃材の処分費用を抑えられます。工事の間住み替える必要がなく、撤去作業によるホコリや騒音などの近隣トラブルが起こりにくくなります。
屋根カバー工法は二重屋根になるため、耐熱性・遮音性の向上が期待できる点もメリットです。夏場の暑さや雨音の騒音対策に効果的です。
さらに金属屋根を被せる際に、間にルーフィングと呼ばれる防水紙を張るため、防水性が向上します。
カバー工法のデメリット
カバー工法のデメリットや注意点には以下の4つがあります。
- 屋根の重量が増す
- 葺き替えに比べて屋根材の選択肢が少ない
- 瓦屋根の場合は施工が難しい
- 屋根の状態によっては施工ができない場合もある
カバー工法は屋根を重ねる施工なので、屋根の重量が増します。屋根が重くなると住宅にかかる負担も大きくなり、耐震性が懸念されます。
しかし、現在カバー工法に使われる屋根材は軽量なのが特徴です。ガルバリウム鋼板屋根であれば平面荷重で重みが分散するので、大きな心配はいりません。もし不安な場合は工事前に修理業者に調査してもらったり、耐震診断をしてもらいましょう。
また、カバー工法は軽量な屋根材を使用する必要があるため、選べる屋根材が限られてしまいます。カバー工法に使用できない屋根材でリフォームしたい場合は、葺き替えを検討してください。
カバー工法は、原則スレート系の屋根材の上に被せる方法です。そのため、瓦屋根(セメント瓦)のような波形形状や厚みのある屋根は固定が難しく不向きです。古いトタン屋根や劣化の激しい屋根も、屋根の下地材が傷んでいる可能性が高いため、カバー工法ができない可能性があります。
判断が難しい場合はリフォーム業者に相談して、カバー工法で施工できるかを確認してもらいましょう。
屋根カバー工法の流れ
屋根カバー工法は5~7日程度が目安と、葺き替えに比べて工期が短いのが特徴です。
スレート屋根をカバー工法で施工する場合、以下のような流れで工事を進めます。
- Step1.頂上の棟板金を撤去する
- Step2.防水シート(ルーフィング)を取り付ける
- Step3.屋根材を設置する
- Step4.頂上の棟板金を取り付ける
工事内容について把握して、リフォームの計画を立てましょう。
Step1.頂上の棟板金を撤去する
まずはスレート屋根を頂上で抑える棟板金を撤去します。
棟板金は棟から雨水の浸入を防ぐ役割があります。カバー工法では撤去した棟板金は再利用できません。最後に新しいものを取り付けます。
Step2.防水シート(ルーフィング)を取り付ける
次に水の浸入を防ぐために、既存の屋根材の上に防水シート(ルーフィング)を貼り付ける作業です。
軒先に間をあけて、つなぎ目から雨水が浸入してこないように、下から上に向かって貼ります。
Step3.屋根材を設置する
新しい屋根材を下から順に1枚1枚丁寧に重ねていきます。屋根の形にあわせて屋根材を加工する作業も必要です。機能性はもちろん、見た目も良くなります。
Step4.頂上の棟板金を取り付ける
屋根材の施工が終わったら、棟板金の下地になる貫板を設置します。その後、屋根材の最後の抑えとして、頂上の棟板金を取り付けて完成です。
屋根カバー工法の費用相場
屋根カバー工法の費用相場について解説します。
工事の作業内容や屋根材にどのくらいの費用がかかるか把握し、予算を決定しましょう。
屋根カバー工法の費用目安
屋根カバー工法の工事価格は、使用する商品などによって変動します。おおよそ80~160万円が目安です。
費用の主な内訳は以下の通りです。
費用の内訳 | 費用相場(㎡単価) |
---|---|
足場の設置 | 600円~1,500円 |
古い棟板金の撤去 | 30,000円~55,000円(1棟あたり) |
防水シートの敷設 | 500円~1,500円 |
新しい屋根材の設置 | 1,000~10,000円 |
屋根下地補修 (下地が劣化している場合) |
1,000~1,500円 |
板金部分の取り付け | 5,000円~8,000円 |
大きな屋根や複雑な形状の屋根の場合は費用がかさみます。また、屋根材にアスベストが含まれるかどうかも料金が変動する要因です。
台風などの影響によるリフォームは、火災保険が適用されて費用を抑えられるケースがあります。
詳しい価格を知りたい場合は、専門の業者に見積りを依頼しましょう。
カバー工法に使用される主な屋根材と特徴
カバー工法に使用される主な屋根材と特徴は以下の通りです。
アスファルトシングル | ガルバリウム鋼板 | |
---|---|---|
費用相場(㎡) | 5,000~8,500円 | 5,000~10,000円 |
耐用年数 | 15~30年 | 20~30年 |
特徴 | ・洋風の外観 ・複雑な形の屋根にも対応しやすい ・軽量で色褪せしにくい |
・シンプルな見た目 ・腐食やサビに強い ・軽量 |
アスファルトシングルはアスファルトが主成分の屋根材です。温かみのある印象を与え、洋風な外観を求める方に適しています。
複雑な屋根の形にも対応しているので、金属やセメントの屋根にも加工が可能です。軽量で色褪せしにくく、美しい外観を長く保てるメリットもあります。
ガルバリウム鋼板は、アルミ・シリコン・亜鉛が組み合わさった合金で、屋根材としてよく使用されています。軽量で腐食やサビに強いのが特徴です。
アスファルトシングルに比べて費用は高めですが、耐久性に優れているのでメンテナンスの回数が少なくて済みます。シンプルな見た目なので、スタイリッシュ・モダンな外観がお好きな方におすすめです。
屋根のリフォームにはカバー工法がおすすめ
既存の屋根を撤去せずに、新しい屋根を上から被せるカバー工法は、葺き替えに比べて廃材がほとんどでないため、コストを抑えられます。
さらに、以下のような点もメリットです。
- 塗装よりも長持ちする
- 工期が短い
- 断熱性・遮音性が向上する
カバー工法ができない屋根もあるため、カバー工法が可能かどうか、また費用がどのくらいか、まずは業者に相談してみましょう。
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ぜひお気軽にお問い合わせください。