屋根の葺き替えとは?似た言葉との違い
どの工事方法が自分の希望に合うのか、イメージしてみましょう。
根の葺き替え(ふきかえ)とは?
屋根の葺き替えは、現在使用している屋根材を撤去して新しい屋根材に交換する工事方法です。
「 葺く(ふく)」には、屋根材を設置して仕上げるという意味があります。
下地や防水シート・ルーフィングの補修が葺き替えに含まれるケースがあり、屋根材のみの取り替えか下地の補修込みの取り替えかで工事内容や費用が変動します。
葺き替え工事は、修理が必要な範囲や部分に応じてすべてを葺き替えるか一部を葺き替えるか選択可能です。雨漏り修理が必要な場合は、併せて修理できます。
交換に使用する屋根材は、断熱材と一体型になっている「金属屋根」の使用率が高い傾向です。特にガルバリウム銅板を改良した「エスジーエル銅板」が使用されるケースが目立ちます。
ガルバリウム銅板は、亜鉛・アルミ・シリコンで構成されている亜鉛メッキ合板です。耐震性・防水性・防錆に優れ、デザインが豊富です。
ガルバリウム銅板よりも高い防錆効果を持った素材を使いたい方には、エスジーエル銅板がおすすめです。ガルバリウム銅板にマグネシウムがプラスされています。
雪や雨が降りやすい地域・湿度が高く銅板が錆びやすい地域に住んでおり、耐久性を兼ね備えた瓦を探している場合は、エスジーエル銅板の屋根材を検討してください。
屋根の「葺き直し」や「屋根カバー工法」との違い
・葺き直し
葺き直しは、一度屋根材を取り外し、防水シート・ルーフィングや下地などを補修・修理してから再び屋根材を設置し直す修理方法です。
葺き替えのように新しい屋根材に交換することは基本的にありません。屋根材を交換するのは、ひび割れている等の再利用できないほど経年劣化が激しい場合です。
葺き直しは日本瓦の屋根に用いられる方法で、金属屋根やスレート屋根では基本的に行いません。
金属屋根やスレート屋根は、屋根を外す時に変形する可能性が高いからです。変形してしまえば再利用できないため、業者へ依頼する前に自宅の屋根の素材を事前に確認しておきましょう。
・屋根カバー工法
屋根カバー工法(重ね葺き)は、部分補修をする工法で、元々使用している屋根材の上に新しい屋根材を被せます。
葺き替えと異なり、下地や防水シートのチェック・補修はしません。雨漏りなどのトラブルが起き、下地の修理が必要な場合は適用できないケースがあるため注意が必要です。
アスベスト(石綿)含有の屋根材を使用しているケースでは撤去費用が高額な傾向にあります。屋根カバー工法であれば、既存の屋根材の撤去作業は生じないため、高額な撤去費用がかかりません。
屋根を葺き替えるメリットとデメリット
屋根の葺き替えを行うメリットとデメリットを徹底解説します。葺き替えにするか別の修理方法にするかを判断するためにも、メリット・デメリットを確認してみましょう。
屋根の葺き替えを行うメリット
葺き替えを選ぶメリットは以下の3つです。
- 家の外観を変えられる
- 次回のメンテナンスまでの期間が長い
- 軽い屋根材に変えられる
それぞれのメリットを解説します。
1.家の外観を変えられる
屋根の葺き替えは屋根材ごと変えるため、家の外観が大きく変わります。
屋根の色や素材、デザインの変更が可能なため、外壁の塗り替えと異なった印象にすることも可能です。
たとえば、日本瓦にすると古風で昔ながらな日本家屋の雰囲気を演出することが可能です。金属屋根やスレート屋根に変えると、モダンで近代的な演出ができます。
2.次回のメンテナンスまでの期間が長い
葺き替えで、寿命・耐震性・耐久性を向上させられるため、次回のメンテナンスまでの期間を延ばせます。
屋根カバー工法や屋根の塗り替えは、防水シートや下地の確認・補修ができませんが、葺き替えなら可能です。
屋根材や内部の補修を行うことで、建物の状態を新築のときのレベルまで戻せます。その結果、家全体の寿命・耐震性・耐久性が上がります。
下地の点検をして必要な施工を施すことで寿命・耐震性・耐久性が上がれば、次回、補修を実施するまでの期間を延長することが可能です。メンテナンスにかかる手間を削減できます。
3.軽い屋根材に変えられる(耐震性を上げられる)
屋根の葺き替えでは、現在利用している屋根材から軽い屋根材への変更が可能です。屋根材の軽量化で、耐震性のアップを狙えます。
昔ながらの瓦屋根は重量があるため家全体の重心が上がります。そのため地震で瓦が落下したり割れたり、家が倒壊したりする恐れがあります。
軽い素材の屋根材に変更すれば家の重心が下がり、基礎部分や柱への負担を軽減することが可能です。地震の耐性を強められます。
屋根の葺き替えを行うデメリット
屋根の葺き替えを行うデメリットは4つあります。
- 工期が長め
- 廃材が出るため場合によっては周囲への配慮が必要
- コストがかかる
- 施行中に雨漏りするリスクがある
それぞれ解説します。
1.工期が長め
屋根の葺き替えは屋根カバー工法に比べて工程が多く、工事の完了まで日数がかかります。
下地や防水シート・屋根材のすべてを取り替える場合は、工事の完了までに15日以上かかることを踏まえたスケジュール設定をしましょう。
梅雨や冬季は、屋根を取り外している期間に雨や雪などが降らないか、事前に確認しておきましょう。
2.廃材が出るため場合によっては周囲への配慮が必要
葺き替えでは、これまで使用してきた屋根を解体し、撤去する作業が発生します。
廃材が出るため、住宅地などで近隣に影響が及ぶ可能性がある場合は、周囲にきちんと挨拶をして、埃などが舞うかもしれない旨を伝えましょう。
施行中は防塵対策のためにメッシュシートを使用しますが、これは近隣トラブルを未然に防ぐために行う、欠かせない心遣いです。
3.コストがかかる
工事期間が長くなると、人件費や解体・撤去費用かさみ、予定よりコストが高額になる傾向です。
葺き替え工事は費用面でも日にちの面でもコストがかかるため、慎重に検討しましょう。
4.施行中に雨漏りするリスクがある
施行中は一時期屋根を取り外すため、雨漏りのリスクがあります。
雨漏りトラブルを防ぐためには、天気予報の事前確認が必要です。台風の時期や梅雨の時期、雪が降る季節の施工はなるべく避けることをおすすめします。
天候が比較的安定している、春〜初夏が葺き替え工事に適した時期です。
どちらを選ぶ?屋根の葺き替えと屋根カバー工法
屋根の葺き替えと屋根カバー工法のどちらを選ぶべきか悩まれている方に、それぞれの工法を検討するポイントをご紹介いたします。
屋根の葺き替えを検討するケース
屋根の葺き替えを検討したほうが良いケースは以下のとおりです。
- 過去に屋根カバー工法を行っている
- 屋根全体・下地等、広範囲が傷んでいる可能性がある
- 重さのある屋根瓦を使用している
- 雨漏りがある
・過去に屋根カバー工法を行っている
過去に屋根カバー工法をしている場合は、葺き替え工事しか受けられません。
屋根カバー工法は元々ある屋根に新しく屋根を被せる方法です。
今より屋根の重さが増すため、同じ工法を繰り返すと、屋根が重たくなり過ぎて危険です。
そのため、3回目の屋根カバー工法はせず、葺き替えでの対応をします。
・屋根全体・下地等、広範囲が傷んでいる
屋根全体もしくは下地まで広範囲の傷みがあると、施工面積が広く補修が必要です。葺き替え工事の実施が適しています。
必要に応じて下地の補修や補強をして、家の寿命を延ばし耐久性・耐震性を向上させましょう。
・重たい屋根瓦を使用している
重たい屋根瓦を使用している場合は、耐震性を高めるために葺き替え工事を選びましょう。
屋根カバー工法は屋根の重量が増すため、地震で家が倒壊するリスクを高めます。
命を守るためにも重たい屋根瓦を使用している場合は、軽い屋根材に変更できる葺き替え工事を検討してください。
屋根の屋根カバー工法を検討するケース
屋根カバー工法のほうが良いケースは、以下のとおりです。
- 屋根の劣化症状は見られるが下地まで及んでいない
- 下地の補修を希望しない
- コストを抑えたい
- 短期間で終わらせたい
- アスベストの飛散に不安がある
- 金属製の屋根を使用している
- 屋根の断熱性・防音性を向上させたい
・屋根の劣化症状はみられるが下地まで及んでいない
塗装・洗浄では補修が追いつかないが、、屋根の劣化は激しくなく下地まで傷みが及んでいない場合は、屋根カバー工法が適用できます。
屋根だけを補強したい方は、屋根カバー工法を検討してください。
・下地の補修を希望しない・コストを抑えたい
屋根カバー工法は補修の希望がなく、なるべくコストを抑えたい場合に適しています。
葺き替えのように下地の確認・補修をしないため、不要な工事は避けたい方にぴったりです。工程が少なく工期を最小限に抑えられるため、コストの削減が可能です。
・短期間で終わらせたい
できるだけ手早く、最短期間で屋根の補強をして欲しいと考えている方には、屋根カバー工法がおすすめです。
屋根カバー工法は最短3日・平均工事期間は10日前後、葺き替えは6~15日かかります。工法別の施工期間を把握して、業者に施工スケジュールを確認しましょう。
・アスベストの飛散に不安がある
屋根カバー工法は、これまでに使用していた屋根材の撤去する際、アスベストの飛散が懸念される建物に向いています。
葺き替え工事では、屋根材を撤去・廃棄し新しいものと交換します。
セメント瓦などアスベストが使われている屋根材を使用している場合、周囲へのアスベスト飛散の防止措置が必要です。
近所の方や家族への不安がある場合は、撤去作業が含まれない屋根カバー工法を選びましょう。
・金属製の屋根を使用している
屋根カバー工法は、既存の屋根の重量が軽いものでなければ施工できません。
屋根材のなかでも非常に軽量な金属屋根を使用していれば、屋根カバー工法で施工が可能です。
・屋根の断熱性・防音性を向上させたい
屋根カバー工法を施工すると屋根が二重になるため、屋根部分の断熱性や防音性を上げられます。
葺き替え工事で使用する素材次第で、断熱性や防音性は高まりますが、屋根カバー工法では、どの素材でも効果を得られます。
断熱性・防音性の向上を図るための工事であれば屋根カバー工法一択です。
屋根を葺き替える費用相場と耐用年数
葺き替え工事の準備を進める前に、予算や時期を考えなければなりません。そこで、屋根を葺き替える費用相場と屋根材の耐用年数を紹介します。
屋根を葺き替える工期の目安と費用相場
屋根の葺き替え工事の一般的な目安は6〜15日ですが、下地の補修・補強の有無、天候で変動します。
費用は100万円~260万円が相場で、平米や屋根材によって大きく異なります。自身の予算に合わせて適切な素材を選びましょう。
高額な屋根材ほど耐用年数が長い傾向なため、価格と耐用年数のバランスを考慮することをおすすめします。
葺き替え工事にかかる費用の内訳と相場は、以下の表のとおりです。
費用の内訳 | 費用相場(㎡単価) |
---|---|
既存屋根の撤去 | 1,500円~3,000円 |
下地の補修 | 2,000円~3,500円 |
防水シートの敷設 | 500円~1,500円 |
新しい屋根材の施行 | 4,000円~15,000円 |
足場の設置 | 600円~1,500円 |
アスベストの撤去(既存屋根に含まれている場合) | 20,000円~8,5000円 |
最も費用がかかるのはアスベストの撤去で、最低金額20,000円・最高金額8,5000円です。
屋根カバー工法が可能な条件を満たし、コストを抑えたい方はアスベストの使用有無を調べて葺き替え工事を検討してください。
屋根材の耐用年数とメンテナンス時期の目安
屋根材の種類によって耐久性や防錆効果の強さなどが異なります。
耐用年数やメンテナンス時期の目安は以下のとおりです。
屋根材 | 耐用年数の目安 | メンテナンス時期の目安 | 費用相場(㎡) |
---|---|---|---|
ストレート | 20~30年 | 10年 | 5,000円~13,000円 |
ガルバリウム鋼板 | 30~40年 | 15~25年 | 6,000円~9,000円 |
日本瓦 | 30~80年 | 20~30年 | 8,000円~15,000円 |
トタン | 10~20年 | 10~15年 | 4,000円~6,000円 |
最も耐用年数に優れているのは、30~80年の日本瓦ですが費用は8,000円~15,000円で、他の素材に比べて高額です。
重量があり耐震性の弱さがデメリットとして挙げられます。
費用と耐用年数のバランスがとれているのは、表の上から2番目にあるガルバリウム鋼板です。屋根材を選ぶ際の検討候補に入れることをおすすめします。
屋根の葺き替えは下地から屋根材までを変えられるがコストもかかる
屋根の葺き替えは下地から屋根材まで一新できます。耐久性を上げたり屋根材を軽量化したりすれば、耐震性が向上やデザインの変更が可能です。
工程が多いぶん工期が長く、人件費や廃材の撤去・解体の費用がかさみやすいため、高めの費用を見積もる必要があります。
屋根の工事の方法には、カバー工事や葺き直しなどもあります。
ご自身が補修・補強したい範囲はどこか、屋根材を新しいものにしたいかなど、工事内容を洗い出し希望にぴったりな方法を見つけましょう。
業者をお探しの方は、工事やリフォームを無料で一括見積ができる「ミツマド」がおすすめです。
屋根の葺き替えに詳しい専門スタッフが、ご要望に合う業者を複数紹介してくれるのでスムーズに施工を進められます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。