陸屋根(ろくやね)とは?
陸屋根は平らな形状が特徴で、日本国内ではビルやマンションに広く採用されています。
ここでは、陸屋根の特徴や活用例、豪雪地帯で採用されている理由をご説明します。
陸屋根は、建築物の屋根形状の一つで、傾斜がほとんどない平らな屋根を指します。
「平屋根」や「フラット屋根」ともいい、最近は戸建て住宅の家づくりにおいても採用されています。
陸屋根の特徴は、平坦な屋根勾配にあります。ビルやマンションなどの高層建築物に陸屋根を採用することで、屋上に庭園・ヘリポート・太陽光パネルなどを設置できます。
一般的な傾斜屋根とは異なり、水平な屋上をさまざまな用途で有効活用できるのが魅力です。
陸屋根は豪雪地帯で見かけることが多い屋根形状です。
近年は落雪事故の発生防止を目的に、豪雪地帯で鉄筋コンクリート構造の陸屋根住宅が増えています。
なぜなら、傾斜のある屋根では積雪が一気に滑り落ちる危険性がありますが、陸屋根ではその心配がありません。
雪下ろしの作業を比較的安全に行えるため、雪国の住宅事情に適しているのです。
陸屋根のメリット・デメリット
陸屋根は、傾斜屋根に比べて水はけが悪く、雨漏りしやすい傾向にあります。
そのため、従来の木造住宅ではほとんど採用されませんでした。
近年は防水技術が向上し、木造住宅においても陸屋根のメリットを活かした住宅設計が可能となっています。
ここでは、陸屋根のメリットをご紹介します。
陸屋根のメリット
メンテナンスが比較的容易
平らな構造である陸屋根は、メンテナンスが比較的容易です。
建物の所有者自身が屋根に上がり、落ち葉や積雪の除去、防水層の点検、小規模な補修作業などを安全に行えます。
このようにメンテナンスにかかる労力を抑えられるのは、陸屋根ならではの魅力です。
また傾斜屋根のメンテナンスでは、多くの場合、足場を組んでから作業に移ります。
対して陸屋根は、基本的に足場を組む必要がありません。
工務店に屋根塗装などのメンテナンスや修繕作業を依頼する場合、1回あたり数十万円かかる足場設置費用を削減できます。
室内の縦空間が広くなる
陸屋根は傾斜屋根とは違い、屋根裏のスペースを必要としません。
屋根裏がない分だけ、室内の縦空間を広く取れるメリットがあります。
天井を高く設計でき、開放感のある室内空間を実現できます。
具体的には、リビングに吹き抜けを作ったり、ロフトを設置したりと、縦空間を活かした住宅設計が可能です。
屋上スペースを活用しやすい
陸屋根では、屋上スペースをさまざまな用途に活用できます。
たとえば屋上庭園を造って家庭菜園を楽しんだり、物干し場にしたりする活用が人気です。
敷地に余裕がない場合も、屋根を使ってスペースを確保できるのは魅力だといえます。
陸屋根のデメリット
水はけが悪い
陸屋根は構造上、どうしても水はけが悪くなります。
雨水や雪が自然に流れ落ちず、滞留水が長期間残ることも珍しくありません。
そのため、適切な屋上防水対策を施さなければ雨漏りのリスクが高くなります。
陸屋根を採用する場合、構造的に避けられない水はけの悪さへの対策が重要です。
断熱性が低い
陸屋根は、屋根と天井の間に空間がないので、夏場は日射熱が室内に伝わりやすくなります。
こうした影響で、最上階は蒸し暑くなりがちです。
一方、冬場は内部の熱が逃げやすくなり、暖房効率が悪くなる可能性があります。
スレート屋根に比べて防水寿命が短い
陸屋根は、スレート屋根に比べると防水寿命が短くなります。
スレート屋根とは、繊維材料とセメントが主原料の「スレート」を使った屋根材のことです。
スレート屋根は一般住宅に採用されている三角形の傾斜屋根で、材料そのものに防水効果が期待でき、かつ雨水が自然に流れ落ちやすい構造となっています。
一般的に防水寿命は、スレート屋根が20〜30年、陸屋根は10〜20年とされます。
防水加工の種類や条件にもよりますが、基本的にスレート屋根の方が寿命は長くなるとされます。
【種類別】陸屋根の防水工事の費用相場
陸屋根は、雨漏りの原因となるリスクが高く、適切な防水工事が不可欠です。
工事内容は多岐にわたりますが、屋根に雨水が滞留しないよう、わずかな傾斜(排水勾配)をつけて施工するケースが多いです。
ここでは、陸屋根の防水工事の種類や特徴、各工法の費用相場をご紹介します。
ウレタン防水
ウレタン防水は、防水材料である液状のウレタン樹脂を塗布して防水層を形成する工法です。
費用相場は1平米あたり3,000円から10,200円程度で、防水工事の中では比較的手頃といえます。
ウレタン樹脂には優れた弾力性があります。
これが建物の微細な動きや温度変化による膨張・収縮に対応し、表面のひび割れを防ぎます。
また液体状の材料を使用するため、複雑な形状や広い面積の屋根にも均一に施工できるメリットがあります。
ウレタン防水の耐用年数の目安は10〜12年程度です。ただし、定期的なメンテナンスを行うことで、より長い期間、防水性能を発揮します。
なお、紫外線による劣化が比較的早いため、5年程度でトップコートを塗り替えるのが目安です。
FRP防水
FRP(繊維強化プラスチック)防水は、ガラス繊維を樹脂で固めて防水層を形成する工法です。
費用相場は1平米あたり4,000円から15,000円程度となります。
防水層が一体成型されるため継ぎ目がなく、高い防水性能を発揮するのが特徴です。
また耐薬品性や耐候性に優れているので、過酷な環境下でも防水性能が低下しにくいとされます。
FRP防水の耐用年数は15〜20年程度です。優れた耐久性と防水性能に加え、軽量かつ衝撃に強いことで知られます。
ただしFRP自体の伸縮性が低いため、広すぎる屋根への施工は不向きです。
シート防水
シート防水は、合成ゴムや塩化ビニル樹脂などでできた防水シートを屋根に貼り付ける工法です。
費用相場は1平米あたり3,000円から8,400円程度と、比較的安価といえます。
シートの色やデザインが豊富ですが、複雑な形状の箇所の施工には向いていません。
シート防水では主に、ゴムシートと塩化ビニールシートの2種類が使われます。
ゴムシートは耐候性や耐久性に優れていますが、やや高価です。
一方、塩化ビニールシートは比較的安価で施工性に優れますが、経年劣化にともなう塩素の放出が懸念されます。
なお耐用年数は15〜20年と長めです。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、屋根に溶かしたアスファルトを塗布し、その上からアスファルトシートを貼り付ける工法です。
費用相場は1平米あたり4,500円から10,000円程度で比較的高価といえます。その分、防水性能や耐用年数に優れます。
アスファルト防水には「トーチ工法」や「常温工法」などの種類があります。
トーチ工法は、改質アスファルトシートの裏面にコーティングされたアスファルトを、トーチバーナーで炙りながら貼り付けます。
シート同士を溶接するために隙間がなくなり、高い防水性を実現する工法です。
一方の常温工法は、常温で使用できる粘着層付き改質アスファルトルーフィングを用いて、火気を使わずに施工します。
安全性が高く環境に優しい工法ですが、トーチ工法などに比べると防水層の密着性が低い傾向にあります。
いずれも耐用年数は20〜30年で、マンションやビルなど、大型建物の陸屋根防水に向いている工法とされます。
陸屋根に関するよくある質問
陸屋根には多くのメリットがあるとはいえ、住宅購入時に陸屋根を選ぶ際、心配になることもあるでしょう。
以下より、陸屋根に関して寄せられるよくある質問と、その回答をご紹介します。
陸屋根に太陽光パネルを設置することは可能?
基本的に可能です。屋根全体のスペースを効率的に活用し、パネルを配置できるメリットがあります。
ただし設置を検討する際は、屋根の構造と耐荷重を確認してください。
太陽光パネルは重量があるため、屋根が重さに耐えられるかどうかを専門家に相談すると良いでしょう。
陸屋根はメンテナンスが必要?
防水性能を維持するために必要ですが、防水工法によってメンテナンス方法や頻度が異なります。
たとえば、アスファルト防水はほかの工法に比べ、比較的メンテナンスの必要性が低いとされています。
メンテナンス頻度は5年に一度が目安で、トップコートの塗り替えなどを行うのが一般的です。
陸屋根の修繕はDIYできる?
基本的にはプロの業者に依頼することをおすすめします。なぜなら、陸屋根の修繕には専門的な技術や知識が求められるためです。
DIYで行うと防水性能が低下したり、不具合が発生したりする可能性があるでしょう。
また屋根の修繕は高所作業となり、危険をともないます。転落事故のリスクがあるだけでなく、適切な安全対策を採らなければ思わぬ事故を招きかねません。
本格的な修繕や大規模な工事については、必ずプロの業者に依頼するようにしましょう。
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陸屋根の修繕で専門業者を選ぶ際のポイントは?
工事を専門業者に依頼する際は、見積もり費用や工事内容が適切かどうかを確認することが大切です。
複数の業者から相見積もりを取り、費用や保証、アフターサービスなどのチェックポイントを比較検討しましょう。
また、各社のホームページなども確認し、陸屋根の修繕経験や実績をチェックするのもおすすめです。
陸屋根の工事は信頼できる業者に依頼しましょう!
陸屋根はモダンなデザインで空間の有効活用がしやすいことから、ビルやマンションに限らず住まいの屋根に選ばれるケースが多くなってきました。
ただし構造上の特徴から水はけが悪くなりやすいため、デメリットを踏まえて対策することが大切です。
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