2024.07.02

工事価格とは?直接工事費や間接工事費に含む費用の内訳と計算方法

工事価格とは?直接工事費や間接工事費に含む費用の内訳と計算方法

「家の工事のために見積書を出してもらったけれど、何に使われている費用なの?」

適正な価格で家の工事を実施するためには、工事に一体どのような費用が必要なのかを知っておくことが大切です。

本記事では、工事価格の構成と具体的にどのような費用が含まれているのかを解説します。

工事価格について知識を身につけ、業者が提示した金額が妥当かどうかチェックできるようにしましょう。

目次

工事価格の構成

工事価格とは、工事にかかる費用全体のことです。工事価格は工事に直接かかる「工事原価」と、施工会社の経営維持に関わる「一般管理費」の2つで構成されています。それぞれの概要について解説します。

工事価格とは?

工事価格 ツリー図

工事価格の構成

・工事原価

工事原価は建設物が完成するまでに要した費用のことです。材料費をはじめ、職人への外注費や現場監督の給料など、幅広い費用が含まれます。

工事原価の主な内訳は「純工事費」と「現場管理費」の2つです。

純工事費は、建設物の工事に直接関わる「直接工事費」と、工事を補助するために必要な仮設物にかかる「共通仮設費」に分かれます。直接工事費と共通仮設費の合計が、純粋に工事にかかった金額として見積もりに計上されます。

現場管理費とは、主に工事現場の管理にかかる費用です。具体的には、現場監督の給料や管理事務所での事務用品代などが挙げられます。

・一般管理費

一般管理費は、建設物に直接関係しないものの、工事価格を決定するうえで欠かせない費用です。本社の水道高熱費や社員の給料など、施工会社の経営維持に必要な経費を指します。工事に関わる費用ではないため、工事原価には含まれません。

直接工事費とは?

直接工事費とは、工事に直接かかる費用全体を指します。具体的にどのようなものが該当するか解説します。

直接工事費の構成

・材料費

材料費とは、建設物の工事に直接かかる材料費用を指します。材料費を算出するには、使用する数量と仕入れ価格が必要です。実際に消費した分だけでなく、使用せず破棄になった分や材料の輸送費用を合わせて計算します。

本社の事務員や営業など、工事に直接関わらない従業員に支払う費用は「人件費」に含まれます。労務費は人件費の一部であるため、「労働力に対して支払う」点では同じです。ただし現場作業員に支払う費用である場合は労務費に該当し、工事原価に含まれます。

・労務費

労務費は工事に直接関わる人員に支払う費用のことです。具体的には作業員の給与や社会保険料などが該当します。

・直接経費

直接経費は工事に直接かかる経費のことです。具体的には特許使用料、現場の水道光熱電力料、機械経費の3つが含まれます。

特許使用料とは、特許権や意匠権の対象となる施工法を実施した場合や、機械を使用した場合などに発生する費用です。「ライセンス」「ロイヤリティ」とも呼ばれており、基本的に所有者のみが使用できる権利です。第三者が使用する場合は特許使用料を支払わなければなりません。

直接経費となる水道光熱電力料は、現場で使用した使用量のみです。基本料金は間接工事に該当します。

・機械経費

機械経費は、工事をする際に必要な機械の使用にかかる費用のことです。機械の整備や修理費用、機械本体の償却費、運転の労務費が含まれます。

直接工事費の計算方法

直接工事費は積算基準に従って計算します。積算基準では、費用の計算式や歩掛が定められています。積算基準は多岐にわたりますが、一般的に使用されるのは国土交通省工事積算基準です。

国土交通省工事積算基準では次の計算式で材料費を算出します。

材料費=所要数量(設計数量×(1+ロス率))×材料単価(購入単価+運搬費)

労務費は次の計算式で求められます。

労務費=所要人数(設計作業量×該当作業の歩掛)×労務単価(基本日額+割増賃金)

間接工事費(共通費)とは?

間接工事費とは建設物には残らない工事に発生する費用です。どのような費用が該当するのか把握し、正確な工事価格を把握できるようにしましょう。

間接工事費の構成

間接工事は以下3つに分類されます。

  • 共通仮設費
  • 一般管理費
  • 現場管理費

それぞれの概要について解説します。

・共通仮設費

具体的には仮設事務所の設置費用や材料の運搬費用などが該当します。

共通仮設費とは、足場や仮設事務所の設置など工事を補助するために必要な設備にかかる費用です。測量や仮設事務所の維持にかかる費用、工事後の撤去費用などが含まれます。

共通仮設費は工事の規模や種類によって変動します。主な共通仮設費は以下の通りです。

準備費:工事をスムーズに進行するために、着工前の事前準備にかかる費用です。工事用地の調査や測量、除草にかかる費用が該当します。建設廃棄物の搬出および処分費も準備費です。
仮設建物費:事務所や倉庫など、工事現場で作業員が使用する仮設建物に必要な費用です。建築・解体にかかる費用だけでなく、管理・維持に必要な費用が含まれます。
工事施設費:工事用の道路の舗装・撤去や工事用地の仮囲いの設置・撤去にかかる費用です。工事用に設置することで作業の効率化をはかります。
環境安全費:工事が安全に進行するよう、現場環境や従業員の安全を守るために使う費用です。安全標識や消火設備の設置費用や、落下物防止のためのシートなどが該当します。
動力用水光熱費:工事現場で必要な電気料金、水道料金、ガス代のことです。電気設備、給排水設備にかかる費用も含まれます。
屋外整理清掃費:工事現場の清掃や片付けにともなって発生した廃材を処分する際にかかる費用です。
機械器具費:工事に必要な機械や器具に関する費用です。クレーンのレンタル費や測量のための器具購入費が該当します。

・現場管理費

現場管理費は工事原価の一つで、工事現場を管理するのに必要な費用です。具体的には、現場で働く従業員の作業服にかかる費用や社会保険料、従業員の募集にかかる費用などが該当します。

現場管理費は、値引き交渉の対象となりやすい費用です。しかし、無茶な値引きは現場環境に悪影響を及ぼします。人員不足や労働環境の悪化により事故が起きてしまう可能性があるため、値引き交渉は慎重に検討しましょう。

現場管理費は、以下17の項目に分類されます。

労務管理費:作業員の募集にかかる費用や作業着の費用など、現場の作業員の労務管理に関する費用です。現場作業員の食事代や通勤費が労務管理費に含まれます。
安全訓練等に要する費用:工事現場の安全に関する訓練や研修にかかる費用です。工事現場での事故や災害を防止するために実施される安全協力会の費用が該当します。
租税公課:契約書や申請書に必要な印紙、証紙の費用です。自動車税や固定資産税も租税公課に該当します。
保険料:工事現場で加入しているさまざまな保険の支払い費用です。たとえば、工事保険、自動車保険、火災保険などの保険料があります。
作業員の給料手当:工事現場で働く現場管理者および作業員の給料です。残業手当や休日出勤代などの各種手当が含まれます。
退職金:現場管理者や作業員に支払う退職金・退職給付金を指します。
法定福利費:工事現場で働く現場管理者や作業員の法律で義務化されている福利厚生に関する費用です。たとえば、雇用保険料や労災保険料、健康保険料の事業主負担分が該当します。
福利厚生費:慰安旅行や娯楽イベントなどの福利厚生にかかる費用です。慶弔見舞金や健康診断の費用も福利厚生費にあたります。
事務用品費:工事現場の事務所で使用する事務用品に関する費用です。パソコンや文房具などの消耗品の購入費用、コピー代等が該当します。
通信交通費:工事現場の事務所で使用する電話の料金やインターネット料金、および郵送費です。
交際費:工事現場に関連する接待に必要な費用です。得意先や取引先との会食や慶弔にかかる費用が該当します。
補償費:工事が原因で発生した騒音や振動、濁水に対し、第三者に支払う補償費用です。
外注経費:自社で請け負う工事の一部を、他社に依頼した際に支払う費用です。
工事登録等に要する費用:工事の実績を登録するために必要な費用です。
動力、用水光熱費:工事現場で使用した水道代やガス代などの光熱費が該当します。加えて電気設備や給排水設備の設置費用が含まれます。
公共事業労務費調査に要する費用:「公共工事設計労務単価」を設定するための公共事業労務費調査にかかる費用です。公共事業労務調査は、公共工事を対象とし、毎年10月に実施されます。
雑費:現場を運営するうえで発生した、上記項目のいずれにも該当しない費用です。

・一般管理費

一般管理費は会社の経営に必要な費用で、本社や支社で発生する費用が対象です。たとえば、本社や支社で使用した光熱費や通信費、本社や支社で働く従業員の人件費などが該当します。

以下より具体的な項目について一つひとつ解説します。

従業員給料手当:本社や支社で働く従業員の給料やボーナスのことです。
役員報酬:会社の役員に対して支払われる報酬を指します。
退職金:本社や支社に勤務する従業員が退職した際に支払う報酬です。
法定福利費:本社や支社で働く従業員の健康保険や雇用保険などの社会保険における、会社負担分の費用です。法律により支払いが義務付けられています。
福利厚生費:健康診断や慶長見舞金など、本社や支社で働く従業員の福利厚生にかかる費用です。社員旅行や歓送迎会の費用が該当します。
地代家賃:土地や建物を賃貸している場合に、貸主に対して支払う費用です。本社や支社の土地や建物の賃料が該当します。
減価償却費:建物やパソコンなどの時間の経過にともなって価値が減少するような資産を購入した際に、耐用年数に応じて購入費用を経費として計上した費用です。
開発償却費:新しい技術、資源のために使用した費用を指します。
維持修繕費:事業に必要な建物や機械の維持や修繕にかかる費用です。
通信費:本社や支社で使用する電話代やインターネット代、切手代など通信に必要な費用です。
消耗品費:コピー用紙やボールペンなどの文具の購入費や机・椅子などの備品の購入費を指します。
租税公課:固定資産税や印紙税など税金の支払いにかかる費用です。

間接工事費の計算方法

間接工事費は以下2つの方法によって計算できます。

  • 国土交通省によって定められている「公共建築工事積算基準」を元に計算する
  • 過去の実績などから求められる間接工事費比率を元に計算する

「公共建築工事積算基準」に定められた共通管理費率、現場管理費率、一般管理費率それぞれの率を元に計算する方法が一般的です。

共通管理費率、現場管理費率、一般管理費率は工事の内容によって計算方法が細かく設定されています。

たとえば新営建築工事の共通仮設費率は、以下の計算式を用います。

Kr=Exp( 3.346 – 0.282 × loge P + 0.625 × loge T )

※Kr=共通仮設費率(%)
P=直接工事費(千円)
T=工期(カ月)

引用:公共建築工事積算基準

  • 直接工事費用や純工事費などに、それぞれ算出した比率をかけて間接工事費を算出します。比率に含まれていない内容については別途算定し、それぞれの比率によって算定された費用に加算しなければなりません。

「公共建築工事積算基準」は、国によって定められた基準であるため、公共工事の入札や工事請負のためのプレゼンで説得力のある見積もりを提示できます。

工事価格の知識を身につけ、納得のいく工事を実施しよう

工事価格は、工事にかかる費用全体のことです。建築に必要な建材費用から作業員の給料など、幅広い費用が該当します。

どのような費用が工事価格として必要か知識を身につけておきましょう。見積もりの金額が妥当かどうか判断でき、納得したうえで工事が実施できます。

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